冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 警視庁の組織犯罪対策部から警察庁に戻ってきた左京としては、現場を離れたという認識になるらしい。

「といっても暇になったわけじゃないがな。お役所仕事ばかりで、精神的には組対よりきつい」

 左京はぼやく。ドラマや小説のイメージからキャリア組は現場の事件には関心が薄いのかと思っていたが、彼はいわゆる現場が好きなのだろう。口ぶりからそれが伝わる。

 ちらりと蛍を一瞥して、彼は苦笑いを浮かべた。

「厄介な案件も引き受けることになったしな」

「そう思われるなら断ってくださって結構です。というより、そうしてもらえると私も助かるのですが」

 蛍はばっさりと返す。

「ずいぶん嫌われたようだな」

 海外ドラマの登場人物のように、彼は降参のポーズで首をすくめた。

「好き嫌いの問題ではなく、私……他人と暮らすとか絶対に無理です。まして結婚なんて」
「奇遇だな。俺も同じ考えだ」

 左京の瞳が楽しげに細められる。

「でしたら!」
「――死にたいのか?」

 地を這うような重い声に蛍はドキリとする。いつの間にか左京の目が真剣になっている。
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