冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 図星を突かれて、蛍は思わずムッとした顔になる。勇気を出して彼に訴える。

「そうやって人の内面にズカズカ踏み込んでくるのはやめていただけませんか?」
「悪い。職業病なんだ」

 ちっとも悪いなどとは思っていない顔で彼はニヤリとする。

「正当化するのも、卑怯です」

 蛍が負けじと言い返すと左京はおかしそうに目を細めた。

「いいな。仕事絡みとはいえ嫌いなタイプの女と暮らすのは苦痛だと思ってたが、君は俺の好みのタイプだ」
「なっ……」

 動揺して声が裏返った。それをごまかそうと蛍は早口に続ける。

「あなたの好みのタイプなんて聞いていません」

 ははっと声をあげて左京は笑った。初めて見るうわべじゃない笑顔。恐怖と困惑と、いろいろな感情でこわばっていた自分の心が少しほぐれていく気がした。

「ひとつ目の質問の答えはこれでいいか。ふたつ目は?」

 蛍はやや言いよどむ。

「ふたつ目はその……さっきのホテルで……」
「あぁ。キス?」

 蛍が羞恥で口にできなかった単語を彼はあっさりと言ってのける。蛍は視線を床に落としながらどうにか言った。
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