冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「なにを笑っているんだ?」

 左京の声もいつもよりずっと柔らかい。自分と一緒にいる彼がリラックスしている様子なのは少し嬉しい気がする。

「私はあまり人と親しくならないように生きてきたんです。その……父親のことを知られるのが嫌だったので」

 美理は知っているけれど、東京に来てから知り合った人にはいっさい話していない。家族のことを話すほど親しくならないよう、誰にも深入りしないように生活してきた。

 だけど、美理とバレエを習っていた頃の蛍はわりと社交的だったのだ。新しい子が入ってくると率先して話しかけに行った。

 今日はあの頃の自分を取り戻せていたような気がする。

「左京さんのおかげで、誰かと仲良くなるワクワク感を久しぶりに思い出せました」

 蛍はふわりとほほ笑む。だが、左京の表情が固まっているのを見て自分の失言に気がついた。焦って言葉を重ねる。

「あ、違うんです。仲良くしてほしいとかそういう意味では決してなく! 左京さんにとっては仕事だってわかっていますから」

(こんなに必死に弁解したらかえって怖い? 人付き合いスキルがなさすぎて、正解が全然わからない!)

「……ごめんなさい」
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