冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「落ち着け」

 横から彼の手が伸びてきて、膝の上にあった蛍の手を包む。ドクンと胸が鳴る。

(どうしてだろう。左京さんと一緒だと、いつもより心臓が騒がしくなる)

 くしゃりと笑う彼に、鼓動がまた早くなる。

「謝る必要なんかないだろ。デートの相手に『楽しかった』と言われて喜ばない男はいない」
「え……」
「ついでに言うと、俺は今日のデートで君に興味が湧いた」

 自分の感情を分析するように、彼はゆっくりと考えを巡らせてから言った。

「親しくなりたいという感情だな」
「私と?」

 彼は美しい瞳の真ん中に蛍をとらえる。

「そう、君と。だいぶ予定外だったから自分でも戸惑ってる」

 胸の奥がキュッと締めつけられた。それが〝ときめき〟だと理解するのにずいぶん時間を要してしまった。

 カフェを出たところで、左京が誰かに声をかけれらた。

「あぁ、やっぱり。左京くんか」

 恰幅のいい五十代くらいの男性だった。

(誰だろう。左京さんと同じく警察庁の方かな)

 そう思ったのは、身なりや振る舞いからかなり社会的地位の高い人物だと想定できたからだ。

幸三郎(こうざぶろう)さん。ご無沙汰しております」
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