冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「いろいろ大変だね、左京くんも。けどまぁ努力はきっと報われるさ。君は菅井一族の落ちこぼれにならないようがんばってくれよ」

(落ちこぼれ?)

 どういう意味なんだろうと思ったけれど、悔しそうに下唇をかむ左京の横顔を見てしまったら声をかけることなどできなかった。

 左京がアクセルを踏み、車が静かに走り出した。と同時に彼が口を開く。

「さっきは不愉快な思いをさせて悪かったな」

 幸三郎の視線のことを言っているのだろう。蛍はふるふると首を横に振った。

(左京さんが私のせいで〝大変〟なのも事実だし)

「期間限定とはいえ君は俺の妻だ。そのうち知ることになるだろうから話しておく」

 そう前置きして彼は語り出す。

「彼、菅井幸三郎は俺の親族だ。菅井家は古くから続いている家で、警察関係はもちろん政界や財界との繋がりも深い」

 本家、分家と家系図もなかなか複雑らしい。

「俺は本家筋ではあるが、一族のなかでは落ちこぼれなんだ」

「キャリア官僚の左京さんが落ちこぼれ……とは?」

 では、どういう人物なら優秀と形容されるのだろうか。左京はクッと唇の端をあげる。
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