冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「俺の祖父は警察庁長官だった。で、その祖父には息子が三人いて上ふたりは優秀だったんだ。祖父と同じようにキャリア組として入庁して出世競争も難なく勝ち進んだ」
「もうひとりの方は?」

 思わず口を挟んでしまった。一番下の息子、彼はどうなったのだろう。

「一番下は菅井家の基準では不出来だった。地方公務員として警視庁に入り、刑事になった。いわゆるノンキャリってやつだ」

 警視庁の刑事。世間一般から見れば十分に立派な仕事だと思うけれど、彼らのいる世界ではそうではないらしい。

「その、菅井一族では人権がないに等しいノンキャリ刑事が俺の父親だ」

『君は菅井一族の落ちこぼれにならないよう』

 先ほど聞いた幸三郎の台詞が耳に蘇る。

(君は……ってそういう意味なの?)

「さっきの方、ものすごく性格が悪いですね」

 思わず本音が口をついて出た。左京はフロントガラスの向こうを見つめたまま、ふっと笑む。

「同感だ」
「左京さんは、ああいう人たちを見返すために出世を望んでいるんですか?」

 そのために蛍と結婚までしたのだろうか。
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