冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 電話を切った蛍はキッチンへと向かう。鍋には野菜をたっぷり入れたミネストローネスープが残っているのだけれど……。

(作りすぎたからどうぞって、自然に言えば!)

 この部屋を見たときから薄々想像はついていたけれど、左京は私生活に無頓着だ。朝食はともかく夕食も栄養ゼリーで済ませているのを蛍は何度か目撃していた。

(互いの私生活に必要以上に干渉しないって約束ではあるけども)

 余った料理のお裾分けもルール違反になるだろうか。悶々と悩んでいる間に左京が帰ってきた。

「ただいま」
「お、おかえりなさい」
「今から夕食か? 今夜は蛍も遅かったんだな」

 キッチンに立っていた蛍を見て彼はそう解釈したようだ。

「いえ、私は食べ終わっているんですけど。左京さんは?」
「あ~、まだだが。もう明日の朝と一緒ってことで」
「どう考えても、夕食と朝食は一緒にできないと思いますけど」

 こんなに適当な食生活で、どうやってこの鍛えあげられた肉体を維持しているのか不思議だった。

 勇気を出して蛍は声をあげる。

「よかったら! 作りすぎてしまったスープを飲んでもらえませんか? 捨てるのももったいないので」
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