冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「スープ?」

 彼は蛍のところまでやってきて、ひょいと鍋をのぞく。それからクスリと笑む。

「警察に嘘をつくのは悪人のすることだぞ」
「え?」

 左京の目が甘く細められる。

「俺の分も作ってくれたんだろう? 少し作りすぎたって量じゃないし」
「そ、そういうわけでは!」

 じっと見つめられて、耐えきれなくなり蛍は視線を斜め上に外す。

「今の動きは嘘をついている人間の典型的な仕草だな」

 クスクスと左京は笑う。蛍は観念して肩をすくめた。

「その、左京さんの食生活がいいかげんなのが気になってしまって。ご迷惑かもしれませんが」
「白状すると、ものすごくありがたい。だが、一度してもらうと俺は次も期待してしまうと思うし……そうなると蛍の負担になる。俺のことは気にしなくていい」

 ありがたいと言ってもらえたことで、決心がついた。ここ数日ずっと考えていたことだ。蛍は意を決して切り出す。

「ここでお世話になっている間は妻の役目を果たさせてください」
「は?」

 左京がぽかんとしている。こんなに無防備な彼の顔は初めて見た。蛍はこの機に彼を説得してしまおうと言葉を重ねる。
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