冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「ずっと気になっていたんです。あなたに守ってもらうばかりでフェアじゃないなって」
「俺は君との結婚を出世の武器にしようとしたんだ。蛍が引け目を感じる必要はない」
「あなたの出世に力を貸せるのは海堂治郎で、私じゃありません」

(私自身もなにか返したい。そう思うのはおかしいかな?)

「母を早くに亡くしているので家事はわりと得意です。料理、掃除、アイロンがけ、必要があればおっしゃってください」

 彼の野心の理由を聞いて、応援したいと心から思えた。自分が支えられる部分があるのなら協力したい。

 左京は困ったように笑う。そしてスカイブルーのネクタイに指をかけて、シュッと緩めた。笑顔もその仕草も、やけに色っぽくて蛍の心臓がドキドキと波打ちはじめる。

「君は知らないだろうが」

 彼はキッチンカウンターに両手をついて、その間に蛍を閉じ込めてしまう。

 左京はグッと迫ってきて、鼻先が触れるような至近距離でささやく。

「男はすぐに勘違いする生きものだ。一度でも優しくされると二度目を求めるし、妻として振る舞われたら、自分のものになったと錯覚する」

 それは女性に免疫のない男性にかぎった話ではないだろうか。
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