冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 翌日の昼。

 ボリューム満点で提供が早い。霞が関で飲食店を繁盛させるにはこの二点が肝心だ。

 そこをしっかりクリアしているこの定食屋は、いつもどおり今日も混雑していた。左京が足を踏み入れるとすぐに「菅井さん!」という快活な声が届いた。

 年は左京よりふたつ下の三十二歳。少年時代から大学まで野球を続けていたスポーツマンで〝爽やか〟を絵に描いたような男。この人畜無害なオーラは彼の刑事としての最大の武器だ。初対面の人間にもまったく警戒心を抱かせない。

「悪いな、(しま)。急に呼び出したりして」

 島亮太(りょうた)。左京が警視庁の組織犯罪対策部にいたときの部下だ。

 キャリア組の上司という存在はたいてい煙たがれるものなのだが、彼は人懐っこく左京とも親しくしていた。

「全然いいっすよ~。ここが奢りならなおいいですね!」

 わりと童顔なうえに口調も軽いのでまだまだ若者といった雰囲気を漂わせている。実年齢より老けて見られがちな左京とは真逆だ。

「わかってるよ」
「よっしゃ。俺はカツカレー。大盛りで!」
「了解」
< 93 / 219 >

この作品をシェア

pagetop