スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
結婚式を挙げる予定のない人間がウェディングドレスを試着するのは、常識的に考えておかしい。それを忘れてはいけない。
けれども奈央子は平然と、ドレスを見せびらかすようにくるりと回ってみせるのだ。
「どうですか? 貴博さんとの結婚式、想像できました?」
「……もういいでしょ。帰ろう」
「その反応は考えましたね。まあ、深雪さんならこんなことしなくても想像できそうですけど」
奈央子はニヤリと笑みを浮かべて物申す。
「別に帰ったって構いませんけど、一度着ちゃったら慌てて脱いでも同じことですよ?」
「別にいいなら早くしてくれない?」
「はいはい」
試着室のカーテンが閉まったことを確認し、店員を呼び戻しに向かうと、入り口の方から他の客の声が聞こえてきた。
「そうなの。式を挙げるのは息子なんだけどね」
「それはおめでとうございます」
「こちらの衣装が目に留まって、つい足が向いてしまって」
どうやらあちらも新郎新婦不在で実質的には冷やかしだ。この店のスタッフにとって今日は厄日かもしれない。
「息子のお見合いがまとまるまで大変だったのよ。だから本当に嬉しくて」
……ん?
ふと、足が止まる。
声にも会話の内容にも聞き覚えがあった。通路の陰からこそこそ様子を伺うと、店頭のソファに座っていたのは篠目文乃さんだった。
……嘘でしょ?
けれども奈央子は平然と、ドレスを見せびらかすようにくるりと回ってみせるのだ。
「どうですか? 貴博さんとの結婚式、想像できました?」
「……もういいでしょ。帰ろう」
「その反応は考えましたね。まあ、深雪さんならこんなことしなくても想像できそうですけど」
奈央子はニヤリと笑みを浮かべて物申す。
「別に帰ったって構いませんけど、一度着ちゃったら慌てて脱いでも同じことですよ?」
「別にいいなら早くしてくれない?」
「はいはい」
試着室のカーテンが閉まったことを確認し、店員を呼び戻しに向かうと、入り口の方から他の客の声が聞こえてきた。
「そうなの。式を挙げるのは息子なんだけどね」
「それはおめでとうございます」
「こちらの衣装が目に留まって、つい足が向いてしまって」
どうやらあちらも新郎新婦不在で実質的には冷やかしだ。この店のスタッフにとって今日は厄日かもしれない。
「息子のお見合いがまとまるまで大変だったのよ。だから本当に嬉しくて」
……ん?
ふと、足が止まる。
声にも会話の内容にも聞き覚えがあった。通路の陰からこそこそ様子を伺うと、店頭のソファに座っていたのは篠目文乃さんだった。
……嘘でしょ?