スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
 ……なるほど。
 つまり文乃さんは、結婚にまるで興味を示さない息子が兄の二の舞となることを恐れてお見合いをセッティングしていたのだ。
 晩婚が全ての元凶ではないだろうが、一度気になってしまうと不安というのはなかなか拭えない。それに貴博さんの少々強引に突っ走る気質は見るからに母方の系譜だから、つい重ねてしまうことも理解はできる。
「だからやっぱり、結婚するなら早いに越したことはないのよ」
 文乃さんは最後に持論を繰り返すことで強調し、話を終えた。
「その先輩にも、いい人がいるなら今を逃してはダメだとしっかり伝えてあげて」
「……分かりました。ちょっと待っててくださいね」
 奈央子は鷹揚に頷くと、こちらへ戻ってきた。
「だそうです、深雪さん」
「え?」
 すかさず私の手を取り、踵を返す。そして文乃さんの前に引っ立てると、ポンと私の肩に手を置いた。
「すいません。今の言葉、ぜひ先輩にもお願いします」
 初めはつい俯いてしまったが、何も言われないので恐る恐る顔を上げる。目の前に連れてこられた「先輩」を見た文乃さんは、これでもかというほど目を丸くしていた。

 具体的な挙式の予定もないのにウェディングの専門店に居座るのは甚だ迷惑だ。という至極当然の理屈で、奈央子は私たちを近くの喫茶店まで連れ出した。
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