スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「やっぱり結婚はできないって深雪さんが諦めようとした時も、そんなことないって私が説得したんです。私、貴博さんの立場のことは全然分かってなかったから」
 そして彼女は勢いよく頭を下げた。
「だから、深雪さんは悪くないんです」
 文乃さんが困った様子で奈央子を見つめている。
「私が勝手にお節介を焼いて、話を余計にややこしくしてしまいました。ごめんなさい」
 虚実入り交じった告白と謝罪に、こちらまで狼狽えてしまった。
 確かに後輩に背中を押された部分も大きいが、この子は確信犯だった。玉の輿だとかパトロンで何が悪いとかうそぶいていたくせに。お節介の方向性が今までと随分違うではないかと、文乃さんがいなければ突っ込んでいたことだろう。
「でも、お二人が愛し合っているんだってことだけは、どうか信じてあげてください」
 うわ……。
 私自身が一番不安に思っていたところを、奈央子はいとも簡単に言葉にしてしまう。しかもその台詞は、どうやら文乃さんにも響いているようだった。
「分かってるわよ、そんなこと」
「……え?」
「越智さんが、その……お金目当てとかではないってことくらいは」
 少々バツが悪そうに告げると、それを誤魔化すように文乃さんはケーキの皿に手を伸ばした。
 一口パクリと呑み込み、フッと溜め息を漏らす。
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