スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました
「貴博さん、意外と色白ですね」
 その肌に馴染んだのは、試した中では一番明るい色だった。
「これ使うって、自分で覚えておいてください」
「あ、ああ」
 貴博さんは頷いて、ぎこちなく手に取りラベルを確認する。
「始めますよ」
 化粧下地を掌に出したところで、はたと気が付いた。
 ……メイクって「道具の使い方」を説明する気でいたけれど、下地なんかいつも直接手で塗ってるよね? 私がこの顔ベタベタ触っちゃって本当にいいの?
「どうかした?」
「いえ」
 意識してしまった途端、心臓が急激に動きを速めた。茶色みがかった美しい瞳がじっとこちらを見つめている。
「あの……やっぱり私、今から自分の顔にしてみせるので」
「いいからやれよ。こっちは覚悟決めてるんだから、深雪が照れるな」
「は、はい」
 あれだ、目の前にいるのはヒロくんだと思うことにしよう。それならこのドキドキ感も演技の糧になるはずだ。
 美形特有の圧に押されながら、もはや見本にはなりそうもない手際の悪さで、化粧下地を顔全体に伸ばしていく。貴博さんは私と鏡を交互にちらちら見やりながら、ずっとされるがままだった。
「……あいつは」
「はい?」
「勇也は、こういうの全部自分でできるわけ?」
 下地からドーランとパフに持ち替えた辺りで、彼は唐突にそんなことを尋ねた。
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