凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
安定期に入ったころ、宏輝さんが婚約したとネットのニュースで目にした。大病院どうしの統合だ、世間の注目を集めているようだった。そのニュースの片隅にちらりと院長、つまり宏輝さんのお父様が手術を受け、無事に成功したとの記事が載っていた。ホッとした。移植は嫌がっていたということだから、おそらく北園会のノウハウの提供を受け、それが生かされたのだろう。
身を引いたかいがあったと、引き裂かれそうな胸の痛みに耐えながらそう思った。
これからも、上宮病院のドクターやスタッフさんたちは、提携で手に入れた技術でたくさんの人の命を救うだろう。
そう思いつつも、胸が引き裂かれそうになる。
『北園、華月さん』
ニュースに掲載されていた宏輝さんの婚約者の写真。彼女は、とても綺麗な人だった。名前のとおり、月を連想させる清楚な顔立ち、さらさらの黒髪、スラリとした肢体は堂々と白衣を羽織っている。
そう、彼女はただのご令嬢じゃない。彼女自身もまた、ドクターなのだ。まだ研修医とのことだけれど、いつかは宏輝さんとふたり日本の医学を引っ張っていく存在になるんじゃないだろうか。海外経験も豊富で、今も時折発展途上国の医療センターなどでボランティアをしているらしい。インタビューからは博愛精神に満ちた人柄が読み取れた。
『医師を目指したきっかけですか? そうですね、実は家業のこともあり医学部に進学はしましたし、研修医としてもキャリアをスタートしました。けれど、実はあまり乗り気でなくて……ただ、数年前に事故を目撃したんです。あたしが医者として名乗り出る前に、他のドクターが駆けつけて……そのときに、なんだか運命を感じたんです。ええもちろん、医師としての……」
才色兼備、性格も優しく穏やかで、なにより同じドクターだ。宏輝さんの伴侶として、理解者として申し分ない。
輝く宝石のような人だった。瑕ひとつない、完璧なダイヤモンドのような人。
『宏輝さんは慈しんでくださるので、気がつけば惹かれるようになっていたんです。出会いはお見合いでしたけれど、決して政略結婚なんかではないんですよ。はやく子どもが欲しいと、結婚が早く決まっただけなんです』
もしかしたら、北園さんはこれが政略結婚だと本当に気がついていないのかもしれない。親御さんにお見合いを勧められ、出会っただけだと。
ううん、宏輝さんも気がつけば彼女に本当に惹かれているのかも。そうじゃなければ『子どもが欲しい』なんて言い出すはずがない。
きっかけはビジネスだったかもしれないけれど、ふたりはとても……お似合いのカップルだった。
最初から、私が彼にふさわしいはずがなかったのだ。
『はは……』
乾いた笑いが漏れ、携帯の画面に涙が落ちた。拭こうと思うのにとてもできない。ぼたぼたぼたと落ち続ける。
『宏輝さん、宏輝さん……』
名前を呼んで、左手の薬指に頬を寄せた。彼がよくキスをしてくれていた指、ふたつも指輪を贈ってくれた、いまは何も嵌っていないただの指に。
『幸せになってね』
そう願うので精一杯。
どうかもっといいドクターになって。
経営者としていい病院にして、たくさんの人たちを救ってあげてほしい。
お腹のなかで、ぽこんと赤ちゃんが動く。
ごめんね、泣くのは今日で最後にするから……。