凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

 目を覚ましたのは、寝室のベッドでのとこだった。すでに日が高い。身体は綺麗にされていたし、パジャマに着替えさせられていた。いつのまに……。
 横にある子ども用ベッドを見てみれば、すでにもぬけのから。

「もう起きちゃったのか」

 手をついて、違和感に目を瞬く。
 そっと左手を目の前にかざす。薬指で朝日を反射するのは、ふたつの指輪。

「──!」

 声にならない叫びを上げた。婚約指輪のダイヤと、宏輝さんのお母様の形見である金の指輪のクンツァイトが煌めく。京都では受け取ることのできなかったふたつの指輪。

 永遠の愛、そして無限の愛……。

 外そうとするのに、ぼろぼろと涙が溢れてとてもそんなことできない。

「私は……なんて、自分勝手なの……」

 自分勝手で、中途半端だ。逃げ出すことも、宏輝さんの愛を受け入れることもできない。
 しばらく泣いて、ようやく落ち着いて何度か呼吸をする。ベッドを降り、よろよろと歩き出す。腰どころか、全身が痛い。さんざん貪られ、啼かされ、あますところなく食べ尽くされたせいだった。

 リビングでは宏輝さんと祐希が朝の子供向けの音楽番組を見ていた。ラグに座ったまま手を動かし踊る祐希に、宏輝さんはスマホのカメラを向けている。祐希の周りにはおもちゃが散らばっていた。私がこちらに持ってきたものもあれば、宏輝さんが買っておいたものと思しきものもある。
 彼はどんな思いでこのおもちゃを買い集めたのだろう。ずきっと胸が痛む。
 宏輝さんが視線を上げ、スマホをソファに置いて立ち上がり、「これ」と一枚の書類を私に渡す。

「これって……」

 婚姻届だ。私の記入欄以外、全て埋まっていた。証人の欄はお母さんと、宏輝さんのお父さん。

「お父様は……賛成なの?」
「当たり前だろう? ……早織さんもだ」
「早織さんが? どうして」
「結局のところ、彼女は利用されていただけなんだ。北園会はうちの病院をまるまる手に入れるために、医療技術の提供をエサに合併話を持ち出した。早織さんはホイホイ食いついた。俺はそれを利用し返した。それだけだ」
「そんな……」

 足元がガラガラと崩れ落ちていく感覚に、知らず身体がかしいだ。

「茉由里!」

 慌てる宏輝さんに抱き止められながら、私は震える身体を抱きしめる。

「じゃあ私は……早織さんに諭されて身を引いた私は……?」

 みじめさに涙が滲む。私もまた、騙されていただけなの?
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