凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「すまなかった茉由里、まだ混乱しているだろうに話すべきじゃなかったな」

 宏輝さんはハッとしたように息を呑み私をソファに座らせ呟く。

「やはりまだ、全てを話すには早いか」

 私に気がついた祐希がおもちゃをひとつ握りしめ、とてとてと歩いてくる。

「まー! こえ! おもちゃ!」

 膝によじ登ろうとする祐希を抱き上げる。私の膝に座った祐希は、ふくふくの頬をにっこりと上げて、ラグに膝をついていた宏輝さんにおもちゃを向ける。

「どぉ」

 反射的にだろう、宏輝さんがおもちゃを受け取って、それからたまらないって顔をした。

「いまの『どうぞ』かな。どうも、祐希、ありがとう」
「ちゃんと『どうぞ』できたの、初めてじゃないかな……」

 初めてはママにしてほしかったな、なんて思いながら祐希を抱きしめる。

「なあ茉由里。俺はこんなふうに祐希の成長をそばで見守りたい」

 私は黙って彼の言葉に耳を傾ける。

「と言っても、明日からは病院に戻らないといけないから……少し忙しくなるけれど、でも」

 そこでひとこと切って、宏輝さんは続けた。

「結婚して欲しい」
「……考えさせて」

 変わらぬ中途半端な答えにもかかわらず、宏輝さんは嬉しげに私の手を握る。

「昨日までははっきりと断られていた。少し前進だ」
「私、わからない……祐希のためには、あなたといたほうがいいって思う。でもあなたのためにはならない。それに、いつか気持ちが離れてしまうんじゃないか、とも思う」
「杞憂だな」

 宏輝さんはフンと鼻で笑う。

「俺が君以外の女性を愛する未来なんか絶対に来ない」
「わ、わからないよ? 私があまりに役立たずで、苛ついて」
「俺が茉由里を役立たずと言い出したら、その時は躊躇なく殺してくれ。多分身体を宇宙人か何かに乗っ取られているから」
「そんな……」

 本気とも冗談とも受け取れる言葉に、曖昧に笑ってみせる。宏輝さんはフッと頬を緩め、祐希ごと私を抱きしめた。

「でも、北園華月さんは? 私、彼女のインタビューを読んだことがあるの。いいお嬢さんなんだろうなって、いいお医者さまになるんだろうなって、そう思ったの……」

 あなたにふさわしい、とは口にしなかった。それは彼の逆鱗であることはもうさすがに理解していたから。
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