クズとブスの恋愛事情。
『刑期終了だ。だが、こちらの世界から永久追放されたお前はこちらに戻ってくる事はできない。
だが、刑期を終え罪人では無くなった時点で封印していたお前の力や能力も戻るようになっている。そして、容姿もこちらの世界の時のままだ。なにせ、お前は“不老不死”なのだから。
そこで、その世界ではお前にとって生きづらくなるであろう予測もして、そちらの世界の重鎮達に相談した所。お前の力や能力、性格などを見てどうするか判断するそうだ。悪いようにはしないと約束していたから大丈夫だろう。以上だ。』
と、説明されたと同時に、異常な力を持った何人かエバンの前に現れ
「お前は我々と同じく不老不死であり、力や能力も持ち合わせている。我らが愛おしい“ショウ様”の父君と母君が、お前の人となりを見てお前と話し合い一年程お前の様子を見て再度お前の意見を聞き判断したいとの事だ。」
エバンの有無も関係無く強制的に連れて来られた場所は、とても神聖で神秘的な美しい所だった。
そこで、生まれたばかりの赤ん坊二人を遠くから見せられ
「…むふふ!かわいいじゃろ?あの愛おしくも狂おしいお方こそ“我らが愛おしいショウ様”じゃ。
その横にいる黒いのは、“ショウ様の従者であり婚約者の桔梗”じゃ。」
ぶっちゃけ、ショウ様だと紹介された赤ん坊のどこが可愛くも愛おしいのかサッパリ分からなかったが…
となりにいる桔梗という漆器のような肌の赤ん坊は、今まで生きてきてこんなにも美しくも神々しい美の権化とでもいうのか異常なまでに美しくも綺麗なものは見た事がない。黒い赤ん坊のあまりの美貌に腰を抜かしてしまった。
桔梗という赤ん坊は、容姿だけでなく普段大人しいが少しでもショウという平凡な赤ん坊から離れると暴れ大泣きして手がつれられず
赤ん坊でありながら、自らの魔道でショウという赤ん坊の側に行き気持ち悪いくらいにべったりとくっ付き
気がつけば、嬉しそうにショウを眺めていたりチュウしたりと…赤ん坊ながらに、ショウが大好きで大好きで一瞬たりとも離れたくないという気持ちが伝わってくるようだった。
そんなこんなで色々ありエバンはこの世界について勉強させられ、なんやかんやすったもんだあったがみんなに認めてもらえるようになり
驚く事に、ショウ様の部下となり幹部にまで昇進。
前の世界での罪の話も聞いていたリュウキとマナのはからいにより、“ショウの育ての親”の一人に任命されてしまったのである。
そして子育てに奮闘しながらも、この世界に転生している筈のクリシュナを探し続けた。
もちろん自分の容姿はこの世界では異常なまでに美しいとされているようで、容姿を含め全てを劣化させる魔具を装備してみんなが嫌う人間達の世界へと繰り出していた。
ショウが幼稚園に入園する頃には、ショウが心配で幼稚園の側にボロアパートを借りショウや桔梗が家路に着くまでボロアパートに居たり学校に通うフリをしてクリシュナの捜索もしていた。
ちなみにだが、周りに金持ちだと思われると色々と面倒事が起こりそうだとワザとボロアパート借り貧乏な苦学生だと偽り過ごしている。
それでも、劣化させる魔具を装備してもイケメンなエバンはとてもモテモテでよく逆ナンされるのだが。モテる分にはかなり気分はいい。(美女に限る)
だけど、こんなに必死に探し回っても全く見つかる気配がない。好きな人の姿どころか本当にこの世界に存在しているのかという不安と疑心暗鬼にかられ
成長期の頃にライコが性や恋愛の先生のようなものだったし、そもそもエバンはモテモテなので女がきれる事はなく一度に複数人と付き合ってたり関係を持つ事が当たり前に育っていたので
やはり快楽を知ってしまったこの体は、体を持て余して熱を発散させたいと疼き大変だ。
だが、恋人も居ない事などなかったがショウの子育てをしているうちに、いつの間にか他のショウのパパ、ママ達に負けないくらいの親バカになっていたのでそこは全く問題なかった。むしろ、恋人やセフレが居たら面倒だと思うくらいに心の変化があった。
だが、問題は性欲が強く発散させたいと疼く体を慰める毎日で、人の体でしか性を発散させた事のないエバンは自慰行為では全然物足りなく不完全燃焼でますますムラムラしていた。
そんな時に出会ったのがアンジェラだった。
アンジェラは、この世界の“人間の中”では目を惹く程の美女でとにかく、エバンを持ち上げ気分を良くしてくれる所が気に入り付き合う事にした。
…もう、この頃にはエバンはクリシュナなんて居ないんじゃないかと自暴自棄になっていてクリシュナ探しを諦めていたのだ。
それもあって、アンジェラとしっかり付き合おうと真剣に交際しているつもりだったのだが。
アンジェラは手の速さとその慣れた様子から性経験の豊富さが伺え、これは別れる事になっても後腐れ無くて楽だなと更にある意味好感が持てた。
それを考えてしまってる時点で別れる前提で真剣交際とは言いがたいのだが…。
もちろん、前の世界での経験から避妊は厳重かつ慎重にした。
パイプカットとも思ったが、クリシュナのことは諦めたといっても何処かで期待してしまってる部分もあり、クリシュナと出会い結婚したらショウみたいな可愛い子供が産まれる事を想像したら、とてもではないがパイプカットをする気にはなれなかった。
結局、色々あって
ようやく見つけた思い人は、男性となっており自分達の子供ができるという夢は絶たれたが
色々ありすぎて、忘れていたがエバンの更生失敗の責任で性別変換されて異世界へと永久追放されたんだったなと、クリシュナと出会った時ようやく思い出したのだったわけだが。
そして、どういう因果かライコの血を引く人間と出会い、ライコの子孫である彼の名も“ミキ”という。
向こうの世界でライコが知らずのうちに出産した子供で、雷帝が自分の後継者としてその赤ん坊を引き取り自分の息子として大切に育てた雷帝の息子の名も“ミキ”。
何より、こちらのミキは容姿や性格がライコそっくりなうえに、ミキとアンジェラは当時の自分とライコを思わせるような関係な事にも何か引き合わせのようなものを感じエバンは、自分の罪と過去の話をクリシュナとミキに聞いてほしくなったのだ。
こちらのミキは、ライコの血筋でありながらきちんと避妊には気をつけているようだが。
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「俺の本名は【宝来 雷我(ホウライ ライガ)】。
そういう理由があって、今はこの世界で宝来家の家族になり、ショウ様の部下兼パパ(育ての親)だ。」
と、エバン…改め、ライガは、自分とライコの話を締め括ったのだが、クリシュナが少し困った表情をして
「…ごめんね?全部聞き逃さないように真剣に聞いてるつもりだったのに、所々全然聞こえない部分があって聞き取れない所があったんだ。」
申し訳なさそうに謝るクリシュナに、ライガはズキリと心を痛めながら言った。
「それは、罪人である俺に掛けられた“呪い”のせいだ。異世界での出来事で俺が話してはならない事は、誰にも聞こえないようになってる。だから、謝らなくていい。むしろ、教えたくても教えられない俺が謝りたいくらいだ。
例えば、“クシュは俺が期間内に更生できなくて、その責任を負わされ性別変換され異世界へと永久追放された事”とか。」
そこで、ミキはハッとした。
…違う!
呪いで、異世界の話ができないんじゃない
クリシュナだけが、異世界での自分に関する情報が聞けないようになってるんだ!
現に、俺はしっかりと異世界にいた頃のクリシュナの話も聞く事ができた
それも責任を果たせなかったクリシュナへの罰の一つなのか?
クリシュナは何も悪い事なんてしてないのに
むしろ目の前の困ってる人に、手を差し伸べて救おうとしただけなのに重過ぎるにもほどがある責任を負わされるって…
しかも、こんな思い罰を受けるなんて…理不尽過ぎないか?
と、ミキはクリシュナに酷く同情したし可哀想過ぎて泣けてきた。なんで、こんないい人がこんな目に合わなきゃいけないんだと。酷い世の中だと感じてやるせない気持ちになった。
…いや、元女性で心も体も女性だったクリシュナは、罰により性別を変換させられてるから…
女性だった頃の記憶を消す事で自分は女だと荒れる事もなく、男としての自分を自然と受け入れる事ができているのかもしれない
そう、考えたらクリシュナが異世界に居た時の話がクリシュナに聞こえないようにする呪いは、もしかしたら雷帝のせめてもの情けだったのかも
と、ミキはよく考えた結果、そう考え直した。
そこで、ミキはとても気になった事があり
「…え〜っとさ、ちょっと聞きづらいんだけどさ〜。クリシュナさんって同性愛者なわけ?単純に、性別関係なくライガさん好きになっちゃった感じ?」
元々女性であったのに、罰として無理矢理性別変換させられたクリシュナ。その時の絶望といったら想像するに絶する。もし、転生したとしても“その時の強い気持ち”が残っていたなら、下手をしたら……
そう考えたら、聞かずにはいられなかったのだ。
すると、クリシュナは少し困った顔をして
「……ノーマルの人達に聞かせるには、気持ち悪いだけの話だと思うんだけど。僕は物心がつく頃には恋愛対象者は男の子だったし…自分が男である事に違和感しか感じなかった。
周りの女の子達が着てる可愛い洋服や髪型にも憧れたし、メイクや可愛い部屋。可愛くてオシャレなお菓子や飲み物も大好きで…コッソリ少女漫画を読んではこんな恋愛がしてみたいなって憧れたりもした。
そして、毎日のようにどうして自分は女の子じゃないんだろうって違和感を感じて…泣く事も多かったかな?」
そう、自分の気持ちを打ち明けてきたクリシュナに、ライガとミキは胸がギュッと握り潰されるような感覚になり悲痛な面持ちでクリシュナを見た。
なんなら、本来なら受けなくていいだろう罰を受けたクリシュナが、こんなにも辛い日々を送っている事実を知り心が苦しくて苦しくてミキとライガは泣いた。
ライガはクリシュナを力いっぱい抱き締めると
「……俺のせいだ!…ごめん、ごめん…ッッッ!!謝って済む事じゃないけど……!!!」
自分のせいで、クリシュナが酷い事になっている現実にライガは大泣きしながら何度も何度も謝った。
「…エバ…本当の名前はライガだったね?どうして、ライガが謝るの?ライガは何も悪くないのに。
ただ、僕がちょっと性別を間違えて生まれちゃっただけだから。…ライガは優しいね。」
と、逆にライガを慰めるクリシュナに、ライガは違うんだ!と、懸命に異世界でのクリシュナの罰について説明しても呪いのせいで、クリシュナには一切その説明は聞こえる事はなかった。
伝えたいのに、伝えられないもどかしさと罪悪感…
…そうか、これはそうなるであろう予測を立てライガにも与えられた罰なのだろう。
…どうしよう、二人が…特にクリシュナが不憫過ぎて見てられない…!
誰か…誰か、この二人を助けてあげてよ
と、ミキが二人を見て涙を流していた時だった。
「……え?今日は来れないんじゃなかったっけ?
あ、こんな時にごめん。今から、俺の娘とそのクソ従者兼婚約者が来るわ。」
なんて、ライガが言った瞬間だった。
いきなり、三人の前に
ショウと桔梗が現れたのだった。
「「……うわぁぁッッッ!!!!??」」
二人のいきなりの登場に、ミキとクリシュナは心臓が飛び出るかと思うほどビックリして悲鳴をあげてしまった。
そんな中、「大丈夫だよ。」と、ライガはクリシュナを抱き締めポンポンと優しく背中を叩いて落ち着かせると
何処からともなく、いきなり現れた二人のうちややぽっちゃり目の平凡な女の子の元へ行き嬉しそうにギュッと抱きしめると
「あれ?今日は急に用事ができて来れないんじゃなかったっけ?」
そう問いかけるライガに
「桔梗がここに来たくないって言うから、説得するのに時間掛かっちゃったの。…ごめんね?……あれ??
…パパだよね?劣化する魔具使ってる?」
遅くなった事に謝罪したあと、少女はライガの容姿への違和感にコテンと首を傾げた。
「さっすが!俺の娘だな!大正解だぜ?全てを劣化させる魔具使ってる。
桔梗宥めるの大変だったろ?説得して、来てくれてありがとな?本当に俺の子は、いい子過ぎて困っちゃうぜ。可愛すぎね?」
と、女の子が大したこともしてないのに、ライガは大袈裟に大絶賛し女の子をぎゅうぎゅう抱き締めて顔中にキスしまくっていた。
「やめてよね!いくら、親でも限度があるだろ!?ショウはあなたの娘であるまでに、俺の恋人兼婚約者なんだからね?」
そう言ってくる、大きなマスクと魔法衣のフードを深々と被り大部分の顔を隠しても分かる異常なまでの美貌の男子は、ライガからショウを引き剥がし今度は自分が抱き締めている。
「…うっわ!出た!【ショウの前だけでの“猫被り”】。本来のお前の言動知ってるから、お前の猫被り見ると寒気しかしねーわ。」
なんて、言い桔梗を怒らせて桔梗がライガに何か怒りの声をあげていたがライガは、それをスルーして
「クリシュナ、紹介するな!ここにいる宇宙一可愛くて愛くるしいこの子が“俺の娘”の宝来 ショウってんだ。で、さっきから性格の悪さが滲み出た事しか言わねークソ生意気なガキは、久遠 桔梗っつってショウ専属の従者兼婚約者だ。」
ああ、さっきライガが話してくれたライガの里子の子だね
ほんわかして可愛い女の子だなぁ
この子は、ライガの他にも何人かと一緒に子育てしてたみたいだけど…この子の産みの両親は、どうしてこんな可愛い子を里子に出しちゃったんだろう?
金銭的な問題かな?
…いや、その前にライガはこのショウって女の子の部下でもあるって言ってたよね?
…ん?考えれば考えるほど、混乱してきちゃったな
と、クリシュナが、ショウの存在についてグルグルと考えていると
ようやくクリシュナの存在に気がついたかのように、ショウと呼ばれる少女はキョトンとした顔をしてクリシュナの顔をジッと見ていた。
そこで、クリシュナはハッとし
「はじめまして。僕はクリシュナというよ。よろしくね?」
慌て自己紹介をすると
「…あ!は、はじめまして。私は、宝来 ショウと言います。いつもパパ…うちの父であるライガがお世話になっています。…あと、いつか私の“ママ”になってくれると嬉しいです。」
ショウは慌てたように自己紹介してきたのだが、何か引っ掛かる言葉が出てきて思わずクリシュナは…
「…え?…“ママ”?」
と、その言葉を口に出してしまった。
ショウの“ママ”というワードに、クリシュナだけじゃな。ライガとミキもかなり驚いている。
だって、クリシュナはどこからどう見ても毛深いのが特徴の極々平凡な男子なのだから。
クリシュナ達が驚いてる中、ショウは周りをキョロキョロし出しソワソワし始めて不安なのだろう。桔梗とライガの手を握って、不安気な表情を浮かべ桔梗、ライガと交互に二人の顔を見ていた。
これは何かあると瞬時に察知した桔梗とライガは、お互いに目を見合わせると
「ショウ、どうしたの?何か、嫌なものを感じる?それとも、違和感がある?」
桔梗は、ショウのぷにぷにまろいホッペにキスすると優しく問いかけた。すると
「クリシュナさんの周りに嫌なモノがへばり付いてて、無理矢理クリシュナさんを変えてるよ?へばり付いてるモノも早く取ってあげて。助けてあげてって言ってる気がするの。」
ショウはそう言って、今にも泣きそうな表情で桔梗とライガそしてクリシュナを見た。
ショウの言葉を聞いてライガとミキはドキリとした。
まさかとは思うが…ショウには呪いとクリシュナの本来の姿が見えてる?確信は無いが、ショウにならあり得る話だと二人は考えていた。
その内に、ショウは桔梗とライガの手を離しクリシュナの側までくると何か分からない言葉で、クリシュナの左上の肩の方に向かって何か会話をしているようだった。
何も知らないクリシュナにとっては、ショウのこの行動は不気味でしかなく少し怖いなと感じてしまった。
ショウちゃんは…精神異常者なのかな?
だから、産みの両親から見放されて…
なんて、あらぬ妄想をして勝手にショウを気の毒がっていた。
そして、ショウは得体の知れない何かと話し終えたらしく、すぐ横にいる桔梗を見ると
「…あのね、桔梗にお願いがあるの!」
と、決心の固まった顔をして強い口調で桔梗に話しかけた。それを見て、少し困った表情を浮かべた桔梗だったが何かを諦めたかのように少し小さく息を吐くと、にっこり笑顔で答えた。
「うん、なに?俺にできる事だっら何でも言って?」
そんな桔梗に、パアッっと表情を明るくさせ
「ありがとう!桔梗、大好きっ!」
なんて、ショウは嬉しそうに桔梗に飛びついた。その行動に桔梗はとっても嬉しそうに表情をふにゃりと緩ませショウを受け止めた。
「…ショウ、かーわい!…ちゅっ!
それで?かわいい俺のショウのお願いって何なの?」
と、ショウのあまりの可愛さに我慢できなくて、ショウのぷるぷるな唇に小さくキスすると、それはそれは甘ったるい声でショウに聞いていた。
「うん!桔梗がクリシュナさんに掛けられた呪いの解術をして、呪いの邪気を私の中に流し込んでほしいの。」
なんて言うショウに、そこに居るみんなが驚いた。
呪いを解術する話なら分かる。分かるがその次の内容だ。呪いの邪気をショウに流す???
何を言ってるのかと
「…あ、あのね?ショウ、よく聞いて?俺が、その人の呪いを解術するのはいいよ?
だけど、その邪気を浄化するって話なら分かるけど、どうしてその邪気をショウの中に入れなきゃいけないの?
それは、とってもとっても危険な事で今度はショウが呪われてしまう可能性があるんだよ?だから、呪いから放たれた邪気は浄化魔道で綺麗にしない?」
と、ショウの突拍子もない恐ろしい内容に、桔梗は慌てて呪いの恐ろしさともっといい方法があるよと提案も出してきた。
それに便乗するように、ライガやミキ、状況をよく分かっていないクリシュナまでも必死になってショウを説得した。だけど
「…う〜んとね?この呪いは、クリシュナさんを苦しめてやろうとかじゃなくて。
なんて言ったらいいのかなぁ〜?言葉にするのが難しいんだけど、クリシュナさんをとっても大切に思ってて心配してる気持ちが凄く伝わってくるの。
浄化しちゃったら邪気は消えるけど…クリシュナさんを本当の意味で助けられないの。邪気の気持ちを形にしないと……!!!」
ショウは一生懸命にみんなに説明しても、元々難しい話でもあるのでその説明をするにはショウの語彙力では説明がとても難しくみんなに伝える事が困難だった。
みんな多少分かる部分もあるが、大半意味不明な説明に頭を捻っていた。
伝えたくても伝わらないもどかしさ、それを実行すれば直ぐに助けられるのに助けられない悔しさでショウは泣きそうになっていた。その時
ショウは優しく体を抱き締められ
「…うん、分かったよ。やってみようね。
もし、ショウに何か起きそうになってもその前に俺が何が何でもショウを守るから。」
と、桔梗はある種の覚悟を決め、表情はショウが不安にならないよう笑顔のまま承諾した。そんな桔梗に
「馬鹿か!?愚かな真似はやめろ!ショウ様がどうなってしまうのか分からないんだぞ!?
それに桔梗、お前も…。桔梗も俺らの家族なんだ。心配にならない訳がない!」
焦って止めようとするライガに
「…ハンッ!オレ様を誰だと思ってんだ?最強の魔道士様だぜ?そんなオレ様が、ヘマするとでも?
それに、ゾーンに入ったショウは意味のない事なんてしない。できるからこそ、そう言ってんだ。そのサポートすんのがオレ様。仮にショウに何かあってもそれを守るのもオレ様。だから心配すんなよ、親父。」
と、桔梗は自信に溢れた顔でライガにそう言い切ると
「…ハハ!さすが、俺の愛おしい娘とクソ生意気な息子だ。期待してるぜ?」
なんて、開き直ったように二人にエールを送った。
それに感極まったショウが
「……パパッ!!ありがと!」
と、ライガに勢いよく抱きつきホッペにキスをした。それを面白くなさそうにイライラしながら見てる桔梗だが、邪魔に入る事はなく大人しく二人を見守っていた。
「ああ、だけど絶対に無理はすんな?無理だって思ったら、直ぐに助けを求めろよ?それに、パパから見て駄目そうだって思ったら直ぐに中止させる。それでも、いいか?」
と、我が娘を心配するライガに
「うん!」
ショウは元気よく返事して、桔梗の元へと小走りで戻った。
「……危険だって事、分かってんのかなぁ〜?
可愛いんだけど、結構アホだからな俺の娘は…いくら桔梗が居るっつっても心配だ。そのアホさも堪らなく可愛い所ではあるんだけどよ〜」
なんて、ショウと桔梗を心配するがあまりソワソワして二人の様子を見ているライガに
親バカ過ぎるじゃーん
と、ミキは苦笑いしていた。そして、これから始まる呪いの解術と“何か”。その“何か”が何か分からなく未知数過ぎて不安しかない。
親バカなライガは、どんな気持ちで二人を見守っているのだろう?そう思いながら、ミキも二人を見守る態勢に入った。