クズとブスの恋愛事情。
フジから桔梗宛に送られてきた、アンジェラの悪事に関する情報を知りショックのあまりパニックになったミキは、救いを求めるように縋る気持ちで無我夢中で陽毬に電話していた。

ミキが電話を鳴らし、数コールで電話に出た陽毬にミキは少しホッとした。


「ひーちゃん、久しぶりー!今、電話だいじょーぶ?」

と、陽毬が電話に出てくれた事に安堵し、これからお喋りができるか軽い調子で確認してるが実際は


…お願い!

時間あるよって言って!!

心の中では、必死にそう祈っていた。


『大丈夫でありますぞ。珍しいでありますな?ミキ君からメールはいただきますが、今まで電話などさほどなかったものですから少々驚きましたぞ。』

なんて、珍しがってる陽毬の声を聞いて


…ひーちゃんだぁ〜

ひーちゃんの声がする

当たり前の事なのに、それを特別に思えてミキは思わず涙が溢れ出してきた。


「…うん。いつも、モデルのトレーニングとか勉強、それに学校にも通ってて忙しいひーちゃんだから電話して邪魔したくないからメールで我慢してたんだぁ〜。
我慢できなくなったら、ひーちゃんの顔見に直接会いに行くしぃ〜。
………でも、今回はね。ひーちゃんの邪魔したくなかったんだけど、どうしてもひーちゃんの声が聞きたかったんだぁ。」

いつもと様子が違うミキ。そして、泣いてる様に感じた陽毬は


『…もしかしてでありますが。アンジェラさんの事で何かありましたかな?』

と、鋭い質問を投げかけると、ミキはドキリとしてしまったが誤魔化しようもないので


「…うん。アンジェラが、ひーちゃんに犯罪行為をしようと企ててる話を偶然知っちゃって。まさか、アンジェラがそんな事するなんて考えた事もなかったからショックで…もう、どうしたらいいか分からなくなって!
…気がついたら、ひーちゃんに電話してた。」

正直に自分の気持ちを話した。


『…そーでありましたか。なんと申したらいいか言葉が出てきませんが、心から信じていた人がまさか裏でそんな事をしていたなんて知ったら、さぞショックだったでしょう。』


…ドキッ!


うん、すっごくショック



『もしかしたら、ミキ君はアンジェラさんの全てを知っていたつもりで今の今まで過ごしてきたというのに、今になって自分の知らないアンジェラさんを知ってしまい、裏切られた気持ちと悲しみが混ざり合って気持ちがぐちゃぐちゃになって心の整理ができない程に荒んでるのですかな?』


…ドキッ!


そう!そうなんだよ!

どうして、ひーちゃんはそんなにオレの心が分かっちゃうの?凄いや…


『私などには、想像してお話するしかできませんが…そんな私でよろしければ、お話を聞きますぞ?聞く事しかできませぬが、話す事で少し気持ちが楽になったり冷静さを取り戻し少々心の整理整頓ができる準備のお手伝いができるかもしれませぬ。
私ごとき、微々たるものにさえなれるか分かりませぬが、よろしければミキ君の今の気持ちや考えなど聞かせては下さいませぬか?』


かなり言葉を選んでるせいか、同じような内容がダブっていたりするが陽毬の心遣いがとても嬉しくて温かくて、気が付けばミキは自分のありったけの気持ちを散けざらい陽毬に話していた。

もちろん、桔梗からフジのアンジェラに関する情報を受け取った事は隠してだ。そこから、どんな火種が起こるか分からないので、こればかりはとても慎重に隠し通した。


ミキは自分の生い立ちからアンジェラとの出会い、そして今までに至るまで喋りに喋り尽くして

ハッと気がついた頃には、かれこれ3時間以上自分の話ばかりしていた。


「…あ、あれー?いつの間にか外が真っ暗になっちゃてる。……ごめんね、ひーちゃん…こんなに、ひーちゃんの大事な時間奪っちゃって。」

と、自分語りばかりしていた事と、約3時間もかなり嫌な話を聞かせてしまった事に対してミキは


…うわぁ〜

他人のこんな家庭やら友人関係やら、そんな話なんて聞きたくないよね

自分だったら、自分の事じゃないし関わりない事だったらいくらか聞くふりして何か理由付けて逃げちゃうかも

自分でも、ドン引きするんだけど〜

まーた、ひーちゃんに嫌われちゃったかなー?

内容も内容で、オレがどんなに酷い人間かひーちゃんに教えちゃってるんだもんねー

…あ〜あ、オレ何やっちゃってるんだろ?

切羽詰まってたとはいえ、自ら好きな人に嫌われるような暴露話しちゃってさ〜


…もぉーーーーーっっっ!!最悪っ!!!


と、ミキは自己嫌悪に陥り、ズーンと凹み頭を抱えてしまった。


ところが


『何をそんなに謝る事があるのですかな?ミキ君の話を聞きたいと言ったのは私の方ですぞ。
むしろ、私如きにその様な大事な話や人に言いたくないような話まで、たくさんしていただき光栄に思っておりまする。話すには、たくさん、たくさん勇気のいる話だったでしょうに。話してくれて、ありがとうであります。』

なんて、お礼を言われた。

しかも


『それに、確かに不遇な家庭に育ち不当な扱いを受け、理不尽な折檻や日頃の虐待……許せない限りですぞ!
そんな中を必死になって生き、そんな事情の欠片も見せず明るく元気に振る舞ってみんなの光になっている。
素晴らしい限りですぞ!』


あの憎くて憎くて堪らない家族とも思いたくないクソッタレ共の事を自分の事の様に怒ってくれて、

人に嫌われたくないという自己防衛の為に取り繕って、ヘラヘラしてる姿をチャラチャラしてて遊んでそうだの何も考えて無さそうという訳でもなく

純粋に褒めてくれた。


『そりゃ、ミキ君はみんなを惹きつける明るく楽しい人柄、そしてとてもイケメンでモテモテなので女性もわんさか寄って来ましょうな。よりどりみどりって、やつですな!羨ましい限りですぞ!!
しかし、そこで発生するモテモテだからこそ避けて通れない男女問題!』


そこまで褒められると嬉しいや照れ臭いを通り越して、恥ずかしくなってくる。

多分、カッコ悪い姿を見せてしまうと思い3D電話(映し出された人物や部屋が立体的に映し出され、まるで電話の相手の部屋の中で相手と直接対面してるかのように映し出される立体型テレビ電話)で、電話しなくて良かったと思うミキだった。

多分、今の自分は泣いたりニヤけたりで凄くカッコ悪い姿になってるから。



『ですがな!ミキ君のセフレさん達が、ミキ君の条件に乗って体の関係を持っていたのでしたら、彼女達はミキ君を責める事も彼女達の事でミキ君が責任を感じる事もありませぬな。お互いに承知の上で承諾、約束しているのですからな。』


…ドキッ!


…うわぁ〜…

ひーちゃんの口から聞きたくなかった話題出てきちゃったぁ〜

話したのオレだけど…エッチできる女友達って言ったのに、セフレって言っちゃってるしぃ〜

エッチできる女友達の事、セフレなんて思った事なかったけど…やっぱり、周りからすればセフレって事になっちゃうんだ

…そっか、セフレかぁ〜…


『例え、彼女達がミキ君の事で犯罪に巻き込まれようと、ミキ君が関与してない限り、ましてや自分が知らない所でそんな事件があったなら。絶対にミキ君は悪くなどありませぬ。そこだけは、間違えないでほしいでありますぞ!!』


…ドキッ!!?


…あ、今もの凄く悩んでた一つが、ひーちゃんの言葉一つであっさり解決しちゃった

…そっか…

オレは、悪くないんだ

そっかぁ〜!


『……色々と辛く苦しい思いをぶつけるかのように、セフレさん達をたくさん作りそこに気持ちをぶちまけるのはいただけませんがな。
いくら自分に言い寄ってきたからとはいえ、お互いに承知の上だとしてもその時ばかりは良いのでしょうが、後々にお互いの首を締める事になるでしょう。』


…ズキ…

今まで、そこまで考えたことなかったけど…もう、手遅れだけど

その通りだと思う

…だって、そのせいで女友達の人生が狂ってしまったよ


『結局、その行為はお互いに思いやりも情の欠片もない、お互い相手を都合のいいオモチャ程度にしか考えてない。…いや、相手の事を考える事すらしない。
お互いに侮辱し傷つけ合うだけのモラルの無い醜い自傷行為だと思いますな。
自分を大切にできない人は、自分の家族やパートナーも大切にできないと私は考えておりますぞ。』


…ズキンッ!…ズキズキ…


…キッツ…!

ひーちゃんから言われると、凄く…心が痛い…

まだ、しっかり告白した事ないけど

…遠回しにこっ酷く振られてるよね、これ…


…苦しい…

悲しいよ…ひーちゃん…


「……それって、オレが色んな女の子達とエッチしてたから汚いって言いたいの?」

陽毬のあまりに、きつい言葉についミキは陽毬に反論してしまった。


『……気分を悪くさせてしまい申し訳ありませぬ…。
つい、ヒートアップしてしまい…ミキ君の事も考えず自分の考えだけ話して暴走してしまいました。
そして、申し訳ない事でありますがミキ君のその質問は、正直否定はできませぬ。逆にミキ君は、自分の体を穢れなき清い体だと言い切れるのですかな?』

陽毬は自分の非を認め謝罪するも、やはり陽毬は自分の曲げられない気持ちや考えをズバズバ言って相手を不快にさせる事もある。


「…アハッ!…なに、それ?意味わかんない。
それって、処女と童貞が結婚して永遠の愛を誓い合って一生添い遂げるみたいな?そんなの今時の漫画ですら、ない話じゃなーい?
いくら、考えたってないない!絶対あり得ないし!
サブイボ出るくらい気持ち悪い話なんだけどぉ〜。マヂで、キモすぎるよ〜。吐き気しちゃう。オエーッ!」

そこまで陽毬は言ってはないが、陽毬の話を大きく広げそれを全否定した。


『……そこまで、大袈裟に話したつもりはあえませぬが。ミキ君が、気持ち悪く有り得ないといった話…私のザ・理想!私史上最高の理想と夢ですな。そんな恋愛や結婚がしたいものですぞ。』


「ひーちゃんってさ。よく、自分の理想論ばっかでそんな偉そうな事言えんね?
もし、ひーちゃんが美人でモテモテだったら、きっとひーちゃんだって好みの男子いたらたくさん恋人作ったりヤリまくりだと思うよ?
自分がモテない底辺だからって、オレらの事僻まないでよね〜。キショいだけだからさぁ〜。」


『……もし、仮に私が美人でモテモテでありましたら、調子に乗ってそんな事ばかりしていたかもしれませぬな。…実際に自分でモテモテになってみなければ分かりませぬが…。』


「…アハハッ!実際にモテモテになってみなきゃ分からないって、どんだけ自分に理想持ってんの〜?
絶対、ひーちゃんモテモテだったらヤリまくってるって〜。」


『…それでもっ!希望や夢、理想は持っていたいものであります!実際に
この世の者とは思えぬ程のもはや絶世を超越したような美貌を持ち、モテモテどころじゃないモテモテなフジちゃんや桔梗君、風雷君という例もあります。
…彼らの場合、異例中の異例でありましょうが。それでも、そんな人達も存在するのです。
私は、フジちゃん達の恋愛話を聞きのが大好きであります。とても羨ましくあり、夢や希望を見る事ができるからです。』


「…あ〜〜〜…。…う〜ん…?…えーっと、あの子達の場合は、ちょっと頭のネジがぶっ飛んでるんだと思うよー?常識から外れてるっての?
普通じゃないよ〜。あんなのぉ〜。それか、隠れてセフレと遊んだり一晩限り遊ぶのが上手いだけなんじゃなーい?一人だけに執着とか怖すぎるしぃ〜、キモすぎじゃーん。アハハッ!」


『…ミキ君は、そう思うのでありますな。
私は、フジちゃん達の恋愛感や価値観がとても好きであります。自分も、フジちゃん達みたいな恋愛に憧れるでありますよ。
この辺りで、私とミキ君の価値観は全く違いますからな。人の数だけ、色んな考え方があると思うのですよ。
人の道を外れてさえいなければ、みんなそれぞれ色んな考えや理想があっていいと思うのですぞ。
だから、私はミキ君の価値観を否定は致しません。私とは真逆過ぎてかなり驚きはしますが。』


「……は?なに、それ?オレの事バカにしてんの?
ひーちゃん、意味不明すぎ。じゃあ、見つかりもしない理想的な童貞男子探し続けて、一生処女貫いたら?
アハハッ!一生、処女とか終わってんね〜。キモくてあり得ないんだけど!ウケるーッ!」


『バカにしてなどおりませぬっ!…ですが、そのような言い方……』


「もう、いいや。ひーちゃん、考え方とかキモ過ぎて一緒にいるのも気色悪くて嫌になっちゃったぁ〜。
ひーちゃん面白いって思って、今まで友達やってたけどさ〜。もう、いらないやぁ〜。ひーちゃんと友達やめるぅ〜。一生、キモい処女のまま終わったらいいんじゃなーい?アハハッ!気持ち悪ぅ〜!」


『……いらないって、私は物か何かでありますか?』


「…もう、いーや。ひーちゃんと友達やめるついで教えたげる。オレが、ひーちゃんに近づいた理由は大樹本人は気が付いてないけど、ひーちゃんの事好きっぽいんだぁ〜。
だから、オレがひーちゃんと付き合って大樹を絶望させたかった。その不幸な顔見たさに、ひーちゃんにアタックしてただけー。じゃなきゃ、わざわざひーちゃんみたいな子なんかに近づいたりする訳ないじゃーん。」


『…何故、ミキ君のような陽キャがわざわざ私みたいな陰キャと一緒にいるのか不明でしたが、これで納得できましたぞ。
…残念な事に、大樹様が私などを好きだというのは大きな勘違いされてるようですな。勘違いで、わざわざ貴重な時間を私に使ってしまい時間を無駄にしてしまいましたな。』


「まあ、もういいやー。ひーちゃんの事なんて、もうどうでもいいしぃ〜。不細工な男集団に好き放題犯されて誰が父親かも分からない子供妊娠しちゃえ!きもブスッ!一生、童貞処女に夢みてろ!バーカ!」


と、ミキは陽毬が自分を受け入れてくれない悲しみ。
そして、価値観の違いからミキは陽毬の恋愛対象外だとハッキリ言われ、陽毬のキツイ言い方に腹が立ち怒り、告白もしてないが振られてしまった腹いせに、ひとしきり陽毬を罵って陽毬との縁と一緒に電話も切った。


「……ひーちゃん、最っ悪ッッッ!!?ひーちゃんなんて、どーなっても知らないっ!!!ひーちゃんなんて、どうにでもなってしまえっっっ!バーーーーーカッッッ!!!」

電話を切った後も、あまりに鬱憤が溜まり過ぎて思い余った言葉を叫んだミキをカイラは、青ざめた顔で呆然とミキをみていた。

その視線に気が付き、青ざめた顔をするカイラと目が合った。そこで、ようやくミキはハッとした。


「………あ…オレ…オレッ!…ハァァ〜〜〜……。…どうしよう、ついカッとなっちゃって……!
…だって、本当にひーちゃんの事好きなんだもんっ!」

そして、深いため息を吐きながら頭を抱え俯き


「なのに、あんな風に言われちゃったらさ。
…色んな女の子達とエッチしまくってたオレは、どう足掻いたってひーちゃんからしたら恋愛対象外じゃーん!手も足も出ないじゃーん!
…本気で好きになった女の子なのに…。好きで好きで堪らないのに…望みも希望もないなんて酷すぎ〜。…キッツゥ〜ッ!」

と、泣きながらカイラに訴え掛けてきた。


そんなミキにカイラは


「…それは辛いよね。ミキ君が辛いのは凄く伝わってくるけど、陽毬さんは?
ミキ君は自分の事ばかり言ってくるけど、陽毬さんの気持ちを考えた言葉は出てきてないよ?本当に、陽毬さんの事好きなの?」

そう問われ、ミキはどうして自分ばかり責められるの?自分はこんなに辛くて悲しいのに!と、いう言葉が喉まで出かかったが、“陽毬の気持ちを考えた言葉が出てきてない”と、いう言葉に……あ、本当だ。と、思って言葉がヒュンと喉の奥は引っ込んでいった。


…ドクン…!


……あれ?オレって、オレの話ばっかして

オレは、辛い悲しいって気持ちをひーちゃんに聞いてもらって……今、オレよりひーちゃんの方が、いつアンジェラの計画が実行されるかもわからない状態で大変な時なのに

ひーちゃんは、自分の気持ちを打ち明けるでもなくただただ黙って最後までしっかりとオレの話を聞いて

キツイ言い方だったけど、オレの事をしっかり考えて出したひーちゃんなりの意見を言ってくれてた

本当にオレの気持ちに寄り添って、いい事はいい、ダメな事はダメだってしっかり伝えてオレと一緒に考えてくれようとしてたのに

自分の非を認められないオレは、鋭い指摘をしてくるひーちゃんの言葉を受け入れられなくて

小さな子供みたいに駄々を捏ねてひーちゃんを困らせて、癇癪を起こした思春期のガキみたいにひーちゃんに酷い言葉ばかり浴びせてしまった


……オレ、自分ばっか悲劇のヒーロー気取りでかなり恥ずかしいヤツじゃん!

…うわぁ〜!ひーちゃんとのやり取りを思い出したら、ひーちゃんの気持ちも何も考えない、自分の事しか考えられない自己中で手に負えないヤツじゃんさ〜

そんで都合のいい話だけ受け入れて、自分に都合悪い話になると怒って癇癪起こして手のつけられないバカになるとかぁ〜

…うわぁ〜、うわぁ〜っ!!!?

こんな、手に付けられないご都合主義の癇癪持ちを誰が好きになるって?

まともな人なら、誰もそんなヤツ好きになるどころか嫌厭しちゃって当たり前じゃ〜ん!


…も〜〜〜!

自分が最低最悪のクズ過ぎて、消えて無くなりたい気分

自業自得だけど、どうしよ〜


もう、どうしたらいいの〜?
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