クズとブスの恋愛事情。
そんなこんなで、通学生になったミキは
ユイの最低最悪な婚約者、九条 蓮(くじょう れん)の素行の悪さを目の当たりにしていた。
社交界での評判はすこぶる良かっただけに、学校での見下した生徒への素行の悪さに驚いてしまった。
大人達や、自分が認めた相手や気に入った人達の前では優秀で品行方正な生徒を演じ、気に入らない相手や見下した相手にはとんでもない醜態を見せてきた。
大樹同様に裏表の激しい人物だなと感じ嫌悪した。大樹同様のプレッシャーや重圧でもあるのだろうか?
中学に入り、蓮の裏表のあまりのギャップにミキはタイジュの事を思い出していた。
〜…そう、あれは
今から半年程前の話になる。〜
ミキが逆行する前
大樹は周りからのプレッシャーや重圧で酷いストレスを抱えており
表向きは素晴らしい優秀な鷹司家の誇りでありみんなの憧れの的、裏は自分の鬱憤を晴らす為にやり場のない気持ちをぶつけるかのように酷い悪さをして遊んでいた。
だが、いつもの悪い遊びにマンネリして飽きた頃。
いつもは王様の如く、周りの輩が悪さしてるのを傍観していたり。面白そうな事を思いつく度に周りに命令して、それを傍観してるだけだったが
マンネリして詰まらなくなりイライラしていた大樹は、刺激欲しさに自らが動く事を提案した。
かなりリスクは高くなるが、いつもの悪い遊びに少々スパイスを加えて変化を楽しみたいが為に
いかにも、根暗で内気な誰からも相手にされない友達すら居なそうなドブスなご令嬢をターゲットにする事にした。
もちろん、地位も底辺で何かあっても家ごと潰せそうな家柄と
この世から消えても誰も悲しまないどころか、直ぐに忘れ去られそうな一家を選んでだ。
計画は大樹のような家柄に良く何でも万能にこなす優秀かつ、みんなの憧れの的である素敵な超イケメンが
ゴミカスのようなド底辺なドブスに、愛の告白をする。
そんな経験のないドブスは、かなり警戒するだろうが時間をかけて心を開かせればドップリと自分にハマる。
その頃合いを見計らって、その令嬢を囲み
“今までの事は全部嘘だった。
誰がお前みたいなド底辺なドブス好きになんかなるかよ。一度、全身鏡で見てみたら?あり得ない。”
と、言った感じの罵声罵倒を仲間達と一緒に浴びせ、ターゲットになった令嬢を天国から一気に奈落の底に突き落としてみんなで嘲笑う。
そういった、クソみたいな計画である。
そのターゲットに選ばれたのが、毎回社交界に強制参加させられている流行りのドレスも買えない
貧乏男爵令嬢の財前 陽毬(ざいぜん ひまり)であった。
もう、何から何まで大樹達にとっては格好の餌食であった。
その出来事(未来)を知っていたミキは、それを阻止すべく動いた。
どうしようもない事ができた時。どうにか頼み込めば、何だかんだ悪態を吐きながらも助けてくれる桔梗は留学中の為不在。
だから、自分が動くしかなかったのだが。有り難い事に、ショウはミキや陽毬に自分達の滞在している国で、様々な貴重な魔具を使い変装して悪さをしているタイジュの話を度々聞く事となり。
大樹がイジメのターゲットに、陽毬を選んだ理由と、どんなイジメの内容かまで事細かく教えてくれていたのである。
だから、どこ主催で場所や日時までバッチリと抜かりなく教えてくれた。
それを聞いていた陽毬は青ざめ
「…ヒィィ〜〜〜ッ!!?恐ろしい悪魔に目を付けられてしまったでござる〜!…相手は王族の方…下手に動けませぬよぉ〜〜〜!!もう、お終いでござるよぉ〜!」
と、絶望していた。そんな陽毬にミキはまん丸な陽毬の体をギュッと抱きしめ
「大丈夫、大丈夫ぅ〜!実はオレってば、親さえ許してくれれば社交界にも参加できちゃうんだよねぇ。」
その言葉に、陽毬は
「…えぇっ!!?上流階級でもないのに、ミキ君は社交界に参加できるのですか?」
と、酷く驚いていた。
ミキは元気が取り柄のお調子者で外見は派手でチャラチャラしていて一見、信用に欠けそうに見えるが
長い付き合いで、ミキの中身はとても家族や友達、恋人思いで優しく、実はすこぶる真面目で几帳面な事を知っている。
だから、ミキの真剣な言葉を疑う事はないヒマリだ。
「今回は特別!ひーちゃんがヤバい事に巻き込まれそうだからさぁ。
ひーちゃんの彼ピッピなオレが、人肌脱いじゃうから安心して大丈夫だぴょ〜ん。」
なんて、ふざけた調子で陽毬を安心させる為に、ニッと笑いかけたかと思うと
「大事な恋人を守れなくて、ひーちゃんの彼氏名乗れないからさ。」
なんて急に真面目な顔をして、ジッとヒマリの顔を見るものだから陽毬のハートはバックバクだ。
たまに見せる真面目な雰囲気や表情を覗かせる度に、惚れ直している事はショウ以外誰にも言ってない陽毬の秘密だ。(だけど、絶対に桔梗にはバレてる)
「…お、おにょれぇ〜〜〜!せっしゃの彼ピッピ様が尊すぎまするぅぅ〜〜〜!!!このイケメンめぇ〜〜〜!爆ゼロォ〜!幸せになってほしいでありますぅ〜!」
陽毬は、あまりのミキのカッコ良さに真っ赤になる顔を向け両手で覆い、本音と照れ隠しの言葉を念仏のようにブツブツと唱えていた。
普通の人が見たなら気味が悪いそれも、ミキにとっては変わっていて凄く面白いし恋は盲目で、それすら可愛く見えるという節穴になっていた。
陽毬のこれを見て、キュンキュンできるのはミキくらいのものだろう。
とんだ、もの好きになったものである。
ちなみにだが、陽毬の影響をモロに受け今のミキは陽毬に負けないくらいの漫画、アニメ、ゲーム好きになっていた。
だが、その内容の事で意見が割れて段々とヒートアップして喧嘩する事もあるが、それはそれで後になっていい思い出になる。未だに、納得できないものもあったりするが。
基本は、二人どっぷりとオタク人生を謳歌している。めちゃくちゃ楽しい!
話は逸れたが、ミキは早速この話を両親に話しショウのパパやママ達、桔梗の両親までその話に参加していた。
何故なら、鷹司 大樹は将来ショウの部下の一人となる候補者だからだ。
候補者達は、ショウや桔梗についてザックリ曖昧にしか伝えられていない事。まだまだ教えられない秘密などたくさんある状態だ。
それが正式な部下となれば
ショウや桔梗…龍鷹(リュウキ)、マナや創造主、この宇宙(世界)や異世界の存在、様々な分岐点で人生の異なる世界線の事までも
ありとあらゆる全て知る事となる。
そして、“不老不死”になりその人に合った人外の力や能力を授かる。
とんでもなく壮大であり神秘的。誰もが喉から手が出る程欲する夢のような話である。
だが、実際にはそれ相応の役割りが与えられるのだが。
だからだ。ショウに関わりのある話なので無視はできないし、事情や内容によっては候補から外される可能性が非常に高い。
とても、大切な話だ。
ミキや桔梗の兄弟達は、親がショウの部下しかも幹部という事で間接的にではあるが、ショウを敬わなければならない立場にある。
決して、ショウの部下ではない事だけは言っておこう。
ただ、その立場上。宝来家の一員として、大雑把ではあるし秘密も多いが
ショウや桔梗、この世界についてなどショウの部下候補者達よりも深く入り込んだ話を幼い頃から教えられている。
ほぼ100%に近い確率で無いに等しい話ではあるが
ショウの部下である家族に、何かあった時に納得できるよう。納得できなくても無理矢理にでも受け入れられるように
知っておかなければならないのだ。
「しかし、陽毬の家族もとんでもない輩だな。陽毬の他の兄妹には流行りのドレスや燕尾服、タキシードとか買って貰えるのに陽毬は姉のお下がりをヒマリのサイズに手直しした流行り送れ着せられるんだろ?」
と、ショウのパパの一人が口を開くと
「自分の娘をなんだって思ってるのか、毎回のように社交界に顔を出せば新しい顔も増える。もしかしたら、そのうちの誰か“物好きが陽毬を貰うかもしれない”。そんなクソな理由で、嫌がるヒマリを無理矢理社交界に連れ出すって?」
それに続き、それぞれが財前家の家庭事情を口に出していき、陽毬の不当な扱いに顔を顰めるのだった。
「ただでさえ、こんな酷い扱いを受けて傷付いている陽毬さんなのに。タイジュの悪い遊びのターゲットにされようとしている。……はあ。タイジュもどうしようもないな。」
大樹の話まで出て来たところで、みんなの意見やらアイディアがどんどん出てくる、出てくる。
そこに、ミキが
「あのさぁ。ひーちゃんの事でみんな真剣に考えてくれてるの凄く嬉しいんだけど。オレの考えも聞いてくれる?」
と、ミキは目をキラキラさせながら張り切って手を上げてきた。
そんなミキに、みんなちょっと苦笑いしつつもミキの考えや意見を聞いて
「それは、いい考えだね!」
「さすが、カイラの息子だけあるわね〜。」
「いや!カイラの息子って!ミキは、オレとカイラの自慢の息子だからな?」
なんて、ミキの考えや意見に賛同してくれる人達が多く。その中の問題点などは、頭脳明晰な数名が指摘してその問題点を補う様々な方法を考え出してくれた。
抜かりはない。
そうと決まれば、早速陽毬に相談して作戦会議だ。
王族のマナーやダンスなどは、何かで役に立つ時があるかもしれないから覚えて置いて損はない。
と、いう事で、ショウと桔梗、ミキの三人は幼い頃から習わされていた。
まさか本当にそれが役にたつ日が来るとは驚くと共に、ダンスでショウに足を踏まれ続けても頑張ったかいがあったなと染み染み思った。
〜そして、やってきました!
社交界当日〜
オレとひーちゃんが会場に入るなり、めちゃくちゃ注目されてザワザワされちゃったよねぇ〜。
それもその筈で
オレは素性がバレないように、肌の色や髪を変化させる“魔具”を装備して
黒髪の肌色になって
目の色や瞳孔の模様は、グレーのカラコンを使用して隠した。初めてのカラコン、ドキドキしちゃったぁ。
そして、周りに舐められないように“王族しか着る事を許されない王族服”を着て、全身これでもかってくらい着飾った。
[ミキが社交界へ乗り込む為。
ファッションに特化したメイド達に、カッコよく着飾ってもらっていた時の話になるが…]
家で髪もバシッとセットして意気込んでたら、その姿を見たお父さん桔梗の兄弟達、ショウのママの一人がわざわざ見に来て腹を抱えて大爆笑していた。
「…う、嘘だろ!?髪や肌の色、目の色まで変えてんのに!髪もセットして正装までしたってのに……ブフッ!!?」
「…ちゃ、チャラいっ!
正装したら、どれだけ変わるのかって期待してたんだけどね。まさか、正装してもチャラく見えるなんて、もう才能だよ。ウッケルゥ〜!」
「…だ、大丈夫よ!見た目が、遊び人に見えるだけで、ミキはとっても真面目な良い子だってお母さん知ってるから!」
なんて、茶化したり妙な励ましの言葉掛けられたり……
ええ〜?
どんなに真面目な格好しても、チャラく見えちゃうって…自分でも凹んじゃうよねぇ。
髪や肌、目の色、瞳孔の模様をガラリと変えちゃううえに、社交界に着ていく王族服着るからさ。
実は、自分でもどんなに変わるんだろって期待してたんだよね〜。
その期待を裏切って、これですか?
オレって、見た目でめちゃくちゃ損してなーい?
普段からも学校や外歩いてるだけで、めちゃくちゃ遊んでそうな女の子達にエッチなお誘い受けまくっちゃうんだよね〜。
オレ、ひーちゃん一筋なのにさぁ〜。
外見で判断しないでほしいよね。
…ハア〜。何をどう頑張っても、オレの外見はチャラいなんて…
前世…オレは異世界に永久追放されるくらいの大犯罪者だったらしいから、その悪い影響が容姿に滲み出てるのかなぁ?
…嫌だな、この容姿…
どんなに、真面目な格好しても遊んでそうに見えちゃうからさ。
もの凄いコンプレックスなんだよねぇ。
だけど、そんなコンプレックスを抱えるオレが不満を漏らす度に
“それはそれは贅沢な悩みですな。ミキ君は、イケメンはイケメンでも国宝級のとんでもない美形なのですぞ?”
“確かに見た目や言動はチャラいの一言!ですが、中身はその真逆の真面目で心優しい素晴らしいときた!!”
“このギャップは、あまりに尊くワタクシめの心を鷲掴みにして離さないか!!分かりますかな?”
“それくらいに、ミキ君はとてつもなく魅力的かつキュンキュンが止まらぬワタクシめの“一番の推し”なのですぞ!”
と、興奮してテンションが上がると我を忘れ、息継ぐ間も無く目をギラギラさせながら
自分の気持ちを一気に伝えてくるマシンガントークの陽毬は圧巻である。取り付く島もない。
こうなった陽毬は誰にも止められず、陽毬が自分の気持ちを一気に吐き出すまで待たなければならない。
のだが、そんな陽毬に圧倒される自分も嫌いじゃないミキだ。やっぱりヒマリは面白い。
それに容姿や言動で遊び人とよく勘違いされるミキは、度々嫌な思いや不満を抱え我慢できなくなる度に
陽毬や家族についポロッと愚痴るのだが、陽毬にこんなにも褒められると
ひーちゃんのに“一番の推し”とか言われて、オレってサイコーに愛されてない?
それに、オレがひーちゃんにとっての“ギャップ萌え”でキュンキュンされちゃってるって知ったら
一番大切な人にそのままのオレが好きだなんて言われちゃったらさ〜。
背中に羽が生えて飛んでっちゃうくらい嬉しいよね。
ひーちゃんといると
オレはそのままでいいんだ!そのままがいいんだって、思えちゃうから不思議。
ひーちゃん、だーーーいすきぃっ!!!
家族とは違った元気や立ち直りができるから不思議だ。どちらの気持ちや励まし方も、甲乙付け難い嬉しい気持ちになるが全く別物だ。
例えば家族は、それはミキの事を知らない心無い人達が勝手に想像して言ってるだけ。気にしなくていい事だけど、不快な気持ちになっちゃうよね。
けどね。ミキに知ってほしいのは、私達がミキがどんな人なのかちゃんと知ってるって事!
ミキは、何処へ出したって恥ずかしくない自慢の息子なんだから。
と、言って励まし心の支えになってくれる。
陽毬の場合は、それがミキ君の悩みならば、逆にそれはミキ君の魅力でもあります!ギャップ萌えって、やつですな!
なんたる最高の讃仏と…尊い。
と、ミキを大絶賛して、ミキの悩みをプラスに変えてしまうのだ。
そんな大きな違いはあれど、ミキにとって陽毬と家族の存在はとても大きい。
ユイの最低最悪な婚約者、九条 蓮(くじょう れん)の素行の悪さを目の当たりにしていた。
社交界での評判はすこぶる良かっただけに、学校での見下した生徒への素行の悪さに驚いてしまった。
大人達や、自分が認めた相手や気に入った人達の前では優秀で品行方正な生徒を演じ、気に入らない相手や見下した相手にはとんでもない醜態を見せてきた。
大樹同様に裏表の激しい人物だなと感じ嫌悪した。大樹同様のプレッシャーや重圧でもあるのだろうか?
中学に入り、蓮の裏表のあまりのギャップにミキはタイジュの事を思い出していた。
〜…そう、あれは
今から半年程前の話になる。〜
ミキが逆行する前
大樹は周りからのプレッシャーや重圧で酷いストレスを抱えており
表向きは素晴らしい優秀な鷹司家の誇りでありみんなの憧れの的、裏は自分の鬱憤を晴らす為にやり場のない気持ちをぶつけるかのように酷い悪さをして遊んでいた。
だが、いつもの悪い遊びにマンネリして飽きた頃。
いつもは王様の如く、周りの輩が悪さしてるのを傍観していたり。面白そうな事を思いつく度に周りに命令して、それを傍観してるだけだったが
マンネリして詰まらなくなりイライラしていた大樹は、刺激欲しさに自らが動く事を提案した。
かなりリスクは高くなるが、いつもの悪い遊びに少々スパイスを加えて変化を楽しみたいが為に
いかにも、根暗で内気な誰からも相手にされない友達すら居なそうなドブスなご令嬢をターゲットにする事にした。
もちろん、地位も底辺で何かあっても家ごと潰せそうな家柄と
この世から消えても誰も悲しまないどころか、直ぐに忘れ去られそうな一家を選んでだ。
計画は大樹のような家柄に良く何でも万能にこなす優秀かつ、みんなの憧れの的である素敵な超イケメンが
ゴミカスのようなド底辺なドブスに、愛の告白をする。
そんな経験のないドブスは、かなり警戒するだろうが時間をかけて心を開かせればドップリと自分にハマる。
その頃合いを見計らって、その令嬢を囲み
“今までの事は全部嘘だった。
誰がお前みたいなド底辺なドブス好きになんかなるかよ。一度、全身鏡で見てみたら?あり得ない。”
と、言った感じの罵声罵倒を仲間達と一緒に浴びせ、ターゲットになった令嬢を天国から一気に奈落の底に突き落としてみんなで嘲笑う。
そういった、クソみたいな計画である。
そのターゲットに選ばれたのが、毎回社交界に強制参加させられている流行りのドレスも買えない
貧乏男爵令嬢の財前 陽毬(ざいぜん ひまり)であった。
もう、何から何まで大樹達にとっては格好の餌食であった。
その出来事(未来)を知っていたミキは、それを阻止すべく動いた。
どうしようもない事ができた時。どうにか頼み込めば、何だかんだ悪態を吐きながらも助けてくれる桔梗は留学中の為不在。
だから、自分が動くしかなかったのだが。有り難い事に、ショウはミキや陽毬に自分達の滞在している国で、様々な貴重な魔具を使い変装して悪さをしているタイジュの話を度々聞く事となり。
大樹がイジメのターゲットに、陽毬を選んだ理由と、どんなイジメの内容かまで事細かく教えてくれていたのである。
だから、どこ主催で場所や日時までバッチリと抜かりなく教えてくれた。
それを聞いていた陽毬は青ざめ
「…ヒィィ〜〜〜ッ!!?恐ろしい悪魔に目を付けられてしまったでござる〜!…相手は王族の方…下手に動けませぬよぉ〜〜〜!!もう、お終いでござるよぉ〜!」
と、絶望していた。そんな陽毬にミキはまん丸な陽毬の体をギュッと抱きしめ
「大丈夫、大丈夫ぅ〜!実はオレってば、親さえ許してくれれば社交界にも参加できちゃうんだよねぇ。」
その言葉に、陽毬は
「…えぇっ!!?上流階級でもないのに、ミキ君は社交界に参加できるのですか?」
と、酷く驚いていた。
ミキは元気が取り柄のお調子者で外見は派手でチャラチャラしていて一見、信用に欠けそうに見えるが
長い付き合いで、ミキの中身はとても家族や友達、恋人思いで優しく、実はすこぶる真面目で几帳面な事を知っている。
だから、ミキの真剣な言葉を疑う事はないヒマリだ。
「今回は特別!ひーちゃんがヤバい事に巻き込まれそうだからさぁ。
ひーちゃんの彼ピッピなオレが、人肌脱いじゃうから安心して大丈夫だぴょ〜ん。」
なんて、ふざけた調子で陽毬を安心させる為に、ニッと笑いかけたかと思うと
「大事な恋人を守れなくて、ひーちゃんの彼氏名乗れないからさ。」
なんて急に真面目な顔をして、ジッとヒマリの顔を見るものだから陽毬のハートはバックバクだ。
たまに見せる真面目な雰囲気や表情を覗かせる度に、惚れ直している事はショウ以外誰にも言ってない陽毬の秘密だ。(だけど、絶対に桔梗にはバレてる)
「…お、おにょれぇ〜〜〜!せっしゃの彼ピッピ様が尊すぎまするぅぅ〜〜〜!!!このイケメンめぇ〜〜〜!爆ゼロォ〜!幸せになってほしいでありますぅ〜!」
陽毬は、あまりのミキのカッコ良さに真っ赤になる顔を向け両手で覆い、本音と照れ隠しの言葉を念仏のようにブツブツと唱えていた。
普通の人が見たなら気味が悪いそれも、ミキにとっては変わっていて凄く面白いし恋は盲目で、それすら可愛く見えるという節穴になっていた。
陽毬のこれを見て、キュンキュンできるのはミキくらいのものだろう。
とんだ、もの好きになったものである。
ちなみにだが、陽毬の影響をモロに受け今のミキは陽毬に負けないくらいの漫画、アニメ、ゲーム好きになっていた。
だが、その内容の事で意見が割れて段々とヒートアップして喧嘩する事もあるが、それはそれで後になっていい思い出になる。未だに、納得できないものもあったりするが。
基本は、二人どっぷりとオタク人生を謳歌している。めちゃくちゃ楽しい!
話は逸れたが、ミキは早速この話を両親に話しショウのパパやママ達、桔梗の両親までその話に参加していた。
何故なら、鷹司 大樹は将来ショウの部下の一人となる候補者だからだ。
候補者達は、ショウや桔梗についてザックリ曖昧にしか伝えられていない事。まだまだ教えられない秘密などたくさんある状態だ。
それが正式な部下となれば
ショウや桔梗…龍鷹(リュウキ)、マナや創造主、この宇宙(世界)や異世界の存在、様々な分岐点で人生の異なる世界線の事までも
ありとあらゆる全て知る事となる。
そして、“不老不死”になりその人に合った人外の力や能力を授かる。
とんでもなく壮大であり神秘的。誰もが喉から手が出る程欲する夢のような話である。
だが、実際にはそれ相応の役割りが与えられるのだが。
だからだ。ショウに関わりのある話なので無視はできないし、事情や内容によっては候補から外される可能性が非常に高い。
とても、大切な話だ。
ミキや桔梗の兄弟達は、親がショウの部下しかも幹部という事で間接的にではあるが、ショウを敬わなければならない立場にある。
決して、ショウの部下ではない事だけは言っておこう。
ただ、その立場上。宝来家の一員として、大雑把ではあるし秘密も多いが
ショウや桔梗、この世界についてなどショウの部下候補者達よりも深く入り込んだ話を幼い頃から教えられている。
ほぼ100%に近い確率で無いに等しい話ではあるが
ショウの部下である家族に、何かあった時に納得できるよう。納得できなくても無理矢理にでも受け入れられるように
知っておかなければならないのだ。
「しかし、陽毬の家族もとんでもない輩だな。陽毬の他の兄妹には流行りのドレスや燕尾服、タキシードとか買って貰えるのに陽毬は姉のお下がりをヒマリのサイズに手直しした流行り送れ着せられるんだろ?」
と、ショウのパパの一人が口を開くと
「自分の娘をなんだって思ってるのか、毎回のように社交界に顔を出せば新しい顔も増える。もしかしたら、そのうちの誰か“物好きが陽毬を貰うかもしれない”。そんなクソな理由で、嫌がるヒマリを無理矢理社交界に連れ出すって?」
それに続き、それぞれが財前家の家庭事情を口に出していき、陽毬の不当な扱いに顔を顰めるのだった。
「ただでさえ、こんな酷い扱いを受けて傷付いている陽毬さんなのに。タイジュの悪い遊びのターゲットにされようとしている。……はあ。タイジュもどうしようもないな。」
大樹の話まで出て来たところで、みんなの意見やらアイディアがどんどん出てくる、出てくる。
そこに、ミキが
「あのさぁ。ひーちゃんの事でみんな真剣に考えてくれてるの凄く嬉しいんだけど。オレの考えも聞いてくれる?」
と、ミキは目をキラキラさせながら張り切って手を上げてきた。
そんなミキに、みんなちょっと苦笑いしつつもミキの考えや意見を聞いて
「それは、いい考えだね!」
「さすが、カイラの息子だけあるわね〜。」
「いや!カイラの息子って!ミキは、オレとカイラの自慢の息子だからな?」
なんて、ミキの考えや意見に賛同してくれる人達が多く。その中の問題点などは、頭脳明晰な数名が指摘してその問題点を補う様々な方法を考え出してくれた。
抜かりはない。
そうと決まれば、早速陽毬に相談して作戦会議だ。
王族のマナーやダンスなどは、何かで役に立つ時があるかもしれないから覚えて置いて損はない。
と、いう事で、ショウと桔梗、ミキの三人は幼い頃から習わされていた。
まさか本当にそれが役にたつ日が来るとは驚くと共に、ダンスでショウに足を踏まれ続けても頑張ったかいがあったなと染み染み思った。
〜そして、やってきました!
社交界当日〜
オレとひーちゃんが会場に入るなり、めちゃくちゃ注目されてザワザワされちゃったよねぇ〜。
それもその筈で
オレは素性がバレないように、肌の色や髪を変化させる“魔具”を装備して
黒髪の肌色になって
目の色や瞳孔の模様は、グレーのカラコンを使用して隠した。初めてのカラコン、ドキドキしちゃったぁ。
そして、周りに舐められないように“王族しか着る事を許されない王族服”を着て、全身これでもかってくらい着飾った。
[ミキが社交界へ乗り込む為。
ファッションに特化したメイド達に、カッコよく着飾ってもらっていた時の話になるが…]
家で髪もバシッとセットして意気込んでたら、その姿を見たお父さん桔梗の兄弟達、ショウのママの一人がわざわざ見に来て腹を抱えて大爆笑していた。
「…う、嘘だろ!?髪や肌の色、目の色まで変えてんのに!髪もセットして正装までしたってのに……ブフッ!!?」
「…ちゃ、チャラいっ!
正装したら、どれだけ変わるのかって期待してたんだけどね。まさか、正装してもチャラく見えるなんて、もう才能だよ。ウッケルゥ〜!」
「…だ、大丈夫よ!見た目が、遊び人に見えるだけで、ミキはとっても真面目な良い子だってお母さん知ってるから!」
なんて、茶化したり妙な励ましの言葉掛けられたり……
ええ〜?
どんなに真面目な格好しても、チャラく見えちゃうって…自分でも凹んじゃうよねぇ。
髪や肌、目の色、瞳孔の模様をガラリと変えちゃううえに、社交界に着ていく王族服着るからさ。
実は、自分でもどんなに変わるんだろって期待してたんだよね〜。
その期待を裏切って、これですか?
オレって、見た目でめちゃくちゃ損してなーい?
普段からも学校や外歩いてるだけで、めちゃくちゃ遊んでそうな女の子達にエッチなお誘い受けまくっちゃうんだよね〜。
オレ、ひーちゃん一筋なのにさぁ〜。
外見で判断しないでほしいよね。
…ハア〜。何をどう頑張っても、オレの外見はチャラいなんて…
前世…オレは異世界に永久追放されるくらいの大犯罪者だったらしいから、その悪い影響が容姿に滲み出てるのかなぁ?
…嫌だな、この容姿…
どんなに、真面目な格好しても遊んでそうに見えちゃうからさ。
もの凄いコンプレックスなんだよねぇ。
だけど、そんなコンプレックスを抱えるオレが不満を漏らす度に
“それはそれは贅沢な悩みですな。ミキ君は、イケメンはイケメンでも国宝級のとんでもない美形なのですぞ?”
“確かに見た目や言動はチャラいの一言!ですが、中身はその真逆の真面目で心優しい素晴らしいときた!!”
“このギャップは、あまりに尊くワタクシめの心を鷲掴みにして離さないか!!分かりますかな?”
“それくらいに、ミキ君はとてつもなく魅力的かつキュンキュンが止まらぬワタクシめの“一番の推し”なのですぞ!”
と、興奮してテンションが上がると我を忘れ、息継ぐ間も無く目をギラギラさせながら
自分の気持ちを一気に伝えてくるマシンガントークの陽毬は圧巻である。取り付く島もない。
こうなった陽毬は誰にも止められず、陽毬が自分の気持ちを一気に吐き出すまで待たなければならない。
のだが、そんな陽毬に圧倒される自分も嫌いじゃないミキだ。やっぱりヒマリは面白い。
それに容姿や言動で遊び人とよく勘違いされるミキは、度々嫌な思いや不満を抱え我慢できなくなる度に
陽毬や家族についポロッと愚痴るのだが、陽毬にこんなにも褒められると
ひーちゃんのに“一番の推し”とか言われて、オレってサイコーに愛されてない?
それに、オレがひーちゃんにとっての“ギャップ萌え”でキュンキュンされちゃってるって知ったら
一番大切な人にそのままのオレが好きだなんて言われちゃったらさ〜。
背中に羽が生えて飛んでっちゃうくらい嬉しいよね。
ひーちゃんといると
オレはそのままでいいんだ!そのままがいいんだって、思えちゃうから不思議。
ひーちゃん、だーーーいすきぃっ!!!
家族とは違った元気や立ち直りができるから不思議だ。どちらの気持ちや励まし方も、甲乙付け難い嬉しい気持ちになるが全く別物だ。
例えば家族は、それはミキの事を知らない心無い人達が勝手に想像して言ってるだけ。気にしなくていい事だけど、不快な気持ちになっちゃうよね。
けどね。ミキに知ってほしいのは、私達がミキがどんな人なのかちゃんと知ってるって事!
ミキは、何処へ出したって恥ずかしくない自慢の息子なんだから。
と、言って励まし心の支えになってくれる。
陽毬の場合は、それがミキ君の悩みならば、逆にそれはミキ君の魅力でもあります!ギャップ萌えって、やつですな!
なんたる最高の讃仏と…尊い。
と、ミキを大絶賛して、ミキの悩みをプラスに変えてしまうのだ。
そんな大きな違いはあれど、ミキにとって陽毬と家族の存在はとても大きい。