名前のない星座
水泳の授業のとき、いつも教室か保健室にいる。何度か鉢合わせたり、教室に呼び出されたりした。
遊びで海やプールに行ったこともそういえばない。綾野たちが誘ったとき、たしか何気ない理由で断られていた気がする。だからもちろん、水着姿なんて見たこともなかったわけで。
「髪が短い!しかもわかっちゃいたけどスタイル良ッ…」
「綾野も百井もそこじゃねーだろ」
「ぎんせーだって思ったくせに。あ、見て、メダルもらったりもしてるっぽい」
今よりもずいぶん短い髪。露わになった首にかけられた、輝く、金色。
見たこともない顔をして笑っている。
なんだよ、これ。
「もしもし、ケイピー?久しぶり!今さ、仕事って土日休み?…え?ああ、久しぶりになっちゃったのはごめんて。でね、ケイピー、合間で時間があったらチウガク水泳部のコーチやってほしいんだけど」
は!?置いてきぼりをくらうおれたちに何の説明も弁解もなしで、こいつ、誰かに電話しはじめたんだけどなんなんだよ…!?ケイピーって誰だよ!
「この人じゃない?雨美が3年のとき部長の、本物の同級生」
部長の桂島とエース渋木、と書かれた写真を見せられる。絶対そうっぽい。
「後輩に頼まれちゃたの。顧問はまだまだ現役でツナショーだよ。…え!やってくれる?感謝すぎる!持つべきはケイピーだね。ほかにもウララとトージに声かける予定。いやいや、これに肖ってるわけではないんだよ?わたしはわたしでいそがしかったのよ」
何がいそがしいんだよ。毎日のらりくらりゆるりって感じなくせに。
そっと目が合う。わすれてた、みたいな表情をされて、本当に腹が立ってくる。
何にも知らねーんだけど。