名前のない星座
「…ほんとに、ずっと連絡しなくて、ごめんね」
水泳部の顧問の綱島と話してるところも見たことない。
そんな声色、今まで聞いたこともない。
「じゃあ今週末からよろしくね〜!」
すぐに明るくちゃらけたように振る舞い、身勝手に電話を切っていた。
「みんなに言ったことなかったっけ?わたし元水泳部なの。つくゆいちゃんの頼みは聞きたかったんだけどもうぜんぜんやってないから訛っちゃってると思うのよ。でもわたしの同級生はほとんど現役でやってるからね、母校に力を貸せって言えば大丈夫なのよ」
「………」
「そこじゃない、とぎんせーは言っております」
「ももちゃん、ぎんのすけの代弁をありがとう。あのね、体調不良が続いちゃって、高3の最後の団体戦を欠場させてるの。それからは水泳と離れてる」
体調不良って。本当なんだろうけど、それも知らない。
「ないしょにしてたわけじゃないけど、あまり進んで話したいことではなかったから。だって過去の栄光ひけらかすとかダサいしサムいじゃん!だから銀星、そんなに悲しそうな顔しないで」
「いや、してない。悲しくはない」
「かわいい子だねえ」
頭を撫でられる。うざくて手を払ったり頭を逸らしたり、なんとか逃れようとしたら、今度はほおをつままれる。
「まだみんなに確認してないからわからないけど、今週末、もし予定がなければわたしの友達たちにぎんたろうを紹介するよ。予定があればちがう日にするよ」
本当に、ずるいな。
「…あいてる」
「よかった。じゃあ全力でみんなの予定をこじあけさせるね!」
言いくるめられるおれに、やれやれという視線を向けてくる百井。気にしてなさそうな綾野。おれも客観的に前者。
だけど、仕方ないだろ、こんなん。