名前のない星座
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学園長室の前に飾られている賞状とトロフィーに、渋木雨美の名前を見つけた。自由形。団体戦のもある。
本当に水泳やってたんだ。つーか、1年のころはよく呼び出されて通っているみたいにここに来ていたのにぜんぜん気づかなかった。
「森平くん、久しぶりだね。君からここに来るなんてめずらしい」
「っす。今日来てる日なんすね」
このじいさんは穂積園長。最近体調が良くないらしく、自分の親戚にこの学園のあれこれを任せるようになった。らしい。
「たまには身体を動かさないとだからね。それに今日は久しい子たちが来るみたいだから」
たぶん渋木雨美の友達のことだ。
「君はおもしろくないって顔をしているけどどうかしたのかい?」
「あー……いや、渋木雨美が水泳部だったってことついこの前知って」
「もしかして森平くんもあの子たちに会いに来たのかい?」
「まあ。渋木雨美に紹介されるらしい。どうせカワイイ年下枠だろうけど」
こんなに誰彼構わず晒してんのになんであいつはああいう態度なんだよな。
「好きな子にカワイイ年下だと思われるなんて良いことじゃないか」
「いや、対象に見られなかったら意味ねーよ」
「君はあの子のことを知らないと諦めているんだねえ」
痛いところを突く。
だってそれは、本当にそうなんだ。
「全てを打ち明けてもらえないからと言って、責めてはいけないよ。それは君のことを信頼していないからじゃない。不貞腐れることはないよ」
埋まらない年の差も、伝わってんのかわからない気持ちも、抱えていることだけしか知らない秘密も、焦らせてくる。
卒業したら、会えないんじゃないか。
おれは、特別でもなんでもないんじゃないか。