晴れない空の恋心
「どうしたの?紗奈。こんな所で。」

振り返ると、二葉くんだった。

「泣いてる…の…?」

その時の二葉くんの声はすごく優しくて心地良かった。

「二葉く…」

「二葉!探してたんだよ。」

私の言葉をさえぎり、あの先輩が言った。どっか行ったと思ったのに…。一瞬で私の心は青ざめた。

「香菜!久しぶりじゃん。」

二葉くんも…名前で呼んでるんだ…。

「紗奈。この子、香菜。俺の幼なじみ。」

えぇ?!幼なじみ…?!

「その子がね、ここで転んじゃって。」

「はっ?!何言ってるんですか!先輩が突き飛ばしたくせに!」

「はぁ〜!変なこと言わないでよそこのチビ!」

「先輩!この香菜先輩が突き飛ばしたんです!」

先輩が何を言ってるのか、訳がわからなかった。先輩は未那の言葉を遮り、言った。

「多分、二葉の彼女と思って。探してたの。」

「大丈夫?」と、私に手を差し伸べる二葉くん。

「…うん。」

少しの照れを隠しながら手をとる。香菜先輩の嘘に引っかかって欲しくなかった。

放課後、本当のことを言った。でも、

「香菜はそんな事しないよ。それに、紗奈がこけたって言ってたじゃん。」って。信じてくれなかった。

そう、二葉くんは誰にも優しい。私にも優しければ、香菜先輩にも優しいのだ。二葉くんはそう言う人なの。しかたないんだ。

「まぁ気にしなくていいよ、紗奈。」

二葉くんの優しさに包まれていたのに私の気分は冷めていた。
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