忘却の天使は溺愛に囚われて


「お邪魔します……」

 朔夜さんの家に入るのは二度目だったけれど、まだまだ慣れない。

「おかえり」
「……っ」

 朔夜さんは私を見てふっと微笑みながらそう言った。
 まるで同棲している恋人のやり取りのように思えて、ドキドキしてしまう。

「ただいま……? です」
「先に風呂にするか? 飯の準備もできてるけど」

 色男にここまで尽される日が来るなんて……日頃の行いが良いから神様がご褒美として与えてくれたのかな。
 何か裏がありそうで逆に怖くなってきた。

 私はお風呂に入った後、ご飯を食べる。
 朔夜さんは何から何までやってくれているから、せめて食器の片付けくらいはしようと思い、ご飯を食べた後すぐ立ち上がった。

「疲れただろ? お前はゆっくりしとけばいい」

「朔夜さんこそ休んでください! ここまでお世話になっているのに何もしないのは申し訳ないので……朔夜さん、お風呂まだですよね? 入ってきてください!」

 送り迎えもしてくれて、家ではもてなしてくれるって、いつ休むつもりなんだろう。
 私が友達と遊んでいる間もきっとやることがあるだろうし……って、あれ? 朔夜さんって普段何をしているんだろう。
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