忘却の天使は溺愛に囚われて
「ひゃあっ⁉︎」
お風呂上がりの朔夜さんの色気が増し増しだった。
濡れた髪、半裸でほどよく筋肉のついた引き締まった体……もうどこに視線を向けても顔が真っ赤になってしまう。
「あ、あの! 服を着てくれませんか⁉︎」
「へえ、恥ずかしがってんだ?」
「なっ……!」
意地悪そうな声が聞こえてきたかと思うと、私の隣に座ってきた。
服を着てくれと頼んだのに……!
朔夜さんとは反対方向に顔を向けるけれど、嫌でも意識してしまう。
「……乙葉」
名前を呼ばれ、ビクッと肩が跳ねる。
ひどく優しい声音に釣られ、つい振り返ってしまった。
「うう……朔夜さんはもう少しご自身の破壊力の強さを自覚してください」
「ん、わかった」
絶対にわかっていない。
私の反応を見てふっと微笑みながら、適当に返事だけしているだけだ。
朔夜さんの大きな手がスッと伸び、私の頬に添えられる。