この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
「蓮さん、テーブルの上の封筒を取ってくれる?」
蓮は無言で封筒を手に取り心菜に渡す。それを心菜が蓮に押し返し、
「中、見てみて。」
蓮は良いのか?っと言う顔で数秒、心菜を見つめそして封筒の中を見る。
中には数十枚の写真が入っていた。
蓮は怪訝な顔つきで、手を差し入れ数枚取り出し写真を確認する。
「…俺って世間からこんな風に思われてるんだな…。」
当事者でありながら、どこか他人事のように写真の感想をポツンと口にする。
その後、不機嫌な顔になり怒りも露わに、袋の中の全ての写真を片っ端から見始めた。
「これを誰から受け取った?」
声は至って冷静だけど、その瞳の奥には怒りが見える。
その目を見て心菜は、蓮を心配すると同時に安心して同情する。
写真には蓮といくつかの女優が写っていた。
それは、隠し撮りをしたかのような情形で、肩を組んで歩いている姿や、楽しげに食事をしている様子。さまざまな日常から切り抜いたような、一枚一枚が巧みで本人の心を逆撫でするには充分過ぎるものだった。
だけど…
普段の素の蓮を知っている心菜にとって、それは滑稽であり得ない写真だったから、直ぐ偽造されたものだって事が分かった。
「いくら何でもやり過ぎだろ…陰湿な嫌がらせにも程がある。」
蓮は鼻で軽く笑い、気にも留めないと言う風にその写真を全て封筒に戻す。
「高橋さんが…
どうしても直接手渡したいってスマホに電話して来たの。聞けば、今マンションのエントランスにいるからって…。」
蓮が瞬時に険しい顔になる。
高橋啓太…1年ほど前、蓮が大怪我をして入院した時の作業療法士だ。
心菜に一方的な好意を寄せていた男。
未だに心菜に未練があるとは…これっぽっちも思っていなかった。
だから、全くのノーマークだった事に頭を抱える。