この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編

「アイツに何かされたのか!?」
真剣な眼差しは怖いくらいで、心菜は話し出す事を少し躊躇する。

なかなか話し出さない心菜を見つめ、ハッとして今度は青くなる。

「まさか…この写真を信じた?
…ショックを受けて…倒れたのか⁉︎」

蓮の思考が思わぬ方向に向かって行くから、慌ててブンブンと首を横に振り手を握る。

「違うよ。写真は直ぐ見せ物だって分かった。だって蓮さん、どこかで誰かと飲んで帰って来る事なんて一度も無かったし、普段こんな俺様みたいな振る舞いしないでしょ。」

世間様が想像する蓮は、俺様で、毎晩歌舞伎町辺りを派手に豪遊し、飲み歩くようなイメージなんだと思うと悲しいけれど…。

本当の蓮は至って真面目で、毎日仕事が終われば真っ直ぐ家に帰って来るような人だ。
妻としても、たまには誰かと飲みに行ったり、もっと自由に楽しんで良いのにと思うほどだったから。

「こんな豪遊する意味が分からない。こんな無駄な時間と金があるなら心菜とチビにその全てを費やしたい。」

そう真顔で言い放つ蓮に思わず微笑んでしまう。

「じゃあ…何で…何てアイツに言われて、ショックを受けた?」

蓮は事の真相をと先を急がす。

「蓮さん…怒らないって約束してくれる?」

「いや、既に勝手に家に押し掛けて、勝手に心菜に会ってる時点で怒りが爆破しそうだが。」

そう蓮に言われてしまうと、ますます話し出し難くなる。

困り顔で心菜が俯いてしまう。

蓮は深く息を吐き、
「分かった…。
心菜を心配させたり、困らせる事はしない。だから、本当の事を教えて欲しい。」
そう誠意を見せる。

「高橋さんが…この写真が偽造であれ何であれ、世間は嘘だと分からない。この写真1枚で北條蓮はたちまち地に堕ちるだろうって…。
自分にはその力があるし、電話一本で事足りるって脅されて…。」

みるみるうちに心菜の大きな瞳に涙がたまる。
蓮は慌てて抱きしめ心菜の気持ちを落ち着かせるように震える背中を撫ぜる。

「ごめん…思い出させて。
だけど、本来なら心菜が与えられた全ての負の感情は、俺に向けられるべきものだった。
身重な心菜を狙って心理を揺さぶるなんて…男として最低で有るまじき行為だ。」

蓮の頭は怒りで一杯だった。
出来ればこのまま今からアイツを殴りに行きたいとさえ思う。

しかし…心菜に誓った以上、暴力に訴える行為を彼女は望まない。冷静になって対処しなければならない。

蓮は唇を噛み締め、心菜を抱きしめながら、この沸々と湧き出る怒りをどうおさめるべきか思案する。
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