初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
「……ちっ」

 ケイトは、はしたなく舌打ちをする。
 とにかく、婚姻届の提出だけは苦戦したのだ。イアンをカーラ家に呼び出し、婚姻届へのサインと印章を迫った。サインまでは震える手でなんとか書いてくれたものの、印章はないとか言い出した。
 だからケイトの父が、国に保管されている印章の写しを閲覧し、それを覚えて同じ印章を造ったのだ。

「イアンの印章は私が預かっているからね。彼は、こうなることを恐れていたのだよ。まぁ、ようは偽造の印章による婚姻は無効になるということだ。さらに言うならば、婚姻届のイアンのサインも、心神喪失の状態でされたもの。正しい判断ができたとは思えないね」

「当時、彼が心神喪失であったと証拠があるのかしら?」

 そう、すべては証拠だ。口ではなんとでも言えるが、証拠がなければ話にならない。

「証拠? あるよ。当時の彼をおかしいと思った私が、王宮医師に診てもらったからね。それで、これが薬物によるものであるとわかった」

 そんな優秀な医師がいただろうか。
 あの薬は、体内から検出されないため証拠も残らないということで、カーラ商会が隣国から手に入れ流していたはずなのに。

「だったら。婚姻が無効であるなら、私とラッシュが関係を持ったとしても、姦通罪にはならないわよね? だって、私とラッシュは愛し合っていた関係ですもの」

 マレリは、ちっちっちっと舌打ちをしながら、右手の人差し指を小刻みに揺らしている。

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