赤金の回廊 ~御曹司に恋した庶民令嬢は愛に惑う~
 大和はくすくすと笑うだけで、一向に受け取ろうとはしない。
「私には価値がないものだ。君に持っていてもらいたいな」
「では、あなたの名前で博物館に寄付します」
「そう来るか」
 大和は目に笑いを浮かべたまま彼女を見る。
「プレゼントのお礼を言われるかと思ったのに。そしたらドライブにつきあって、と誘う予定だったのにな」
「遠慮します」
「隙がないなあ」
 言って、大和はぐらりと揺れて膝をついた。
 千枝華は驚いてしゃがみ、大和の顔をのぞきこむ。
「大丈夫ですか?」
「……大丈夫」
 苦しそうに、大和は答える。
「救急車を……」
「待って、大事にしたくない」
 大和は肩で荒く息をしながら、そう答える。
「近くに車を待たせているから、そこまで送ってくれないか」
「わかりました」
 いったん本の入った箱をバッグに戻し、大和に肩を貸す。
 必死になっている千枝華は、後ろから写真を撮られていることなど気付きもしなかった。

 彼の言う場所に、黒く大きな外車が止まっていた。
 近づくと、助手席からスーツの女性が飛び出して来た。
「社長!」
 女性は千枝華の反対側から彼を支える。大和と同じくらいの年齢に見えた。
 一緒に彼を後部座席に座らせる。
「またお倒れになったのですか」
「すまない」
「だから無理をなさらないでと申し上げていますのに」
 おろおろと女性が言う。
「すぐに病院に行きましょう」
「……仕方ないな」
 大和は口の端だけで笑った。いつもの生気がなくて、千枝華は不安になって彼を見る。
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