赤金の回廊 ~御曹司に恋した庶民令嬢は愛に惑う~
はい、と千枝華は返事をした。
車はそのまま高速に乗る。
「どこへ……」
「本社が山梨なので、病院もそちらなのですよ」
さすがに遠すぎないか、と千枝華は居心地悪く身じろいだ。ここから片道二時間はかかる。
「すまない、巻き込んで」
大和からいつもの不敵なふてぶてしさが消えていた。その顔に浮かぶ笑みはどこかはかなげで、声は弱々しい。
「手を握っていてくれないか」
男らしい節くれだった手を差し出される。無碍にもできず、結局は大和の手を握った。
「優しいな……。そういうところに私は惚れたんだ。君は覚えていないだろうが、私は前にも君に会っている。初めて見かけたとき、落ちた靴を拾って赤ちゃんを抱いたお母さんを追いかけていた。そのときは優しい子もいるな、と思った程度だった。ユウキテクノロジーズのお嬢さんだと知ったのはあとになってからだ」
呼吸の乱れこそないが、大和はまだ苦しそうだった。
「次に見かけたとき、君は将周くんと一緒にいた。やけに胸が苦しくなってね……それで私は君に恋していると気が付いたんだ。おかしいだろ、一回見かけただけの7歳も年下の女に惚れるなんて」
自嘲気味に笑って千枝華を見る。彼女は黙って首を振った。
「将周くんの創業パーティーなら君に会えると思ってもぐりこんだ。そして、やっぱり君は美しくて優しかった。最後に惚れた相手が君で良かった」
大和に優しく見つめられ、千枝華は思わず目をそらした。
窓の外では高速の壁が勢いよく流れていく。
「困るよな、こんなこと言われても。そうだ、もっと楽しい話をしよう」
彼は無理矢理に笑い、話題をそらした。
彼が一人旅をしたときのこと、ドライブで出会った野生のシカのこと、山梨から見た富士山は表か裏かなど、さまざまな話で千枝華の心をほぐしていった。
車は高速を降り、山中湖のほとりにあるホテルの駐車場に入った。
「ここにお医者様を呼んであります。社長が重病だと発覚すると会社の信用に関わるのです」
貴美子が説明した。社長の体調が会社に影響するのは千枝華にもわかるのだが、だからといって、ホテルに医者を呼ぶものだろうか。
「ここまででいい。悪かった。車で君を送らせるよ」
大和が言う。
車はそのまま高速に乗る。
「どこへ……」
「本社が山梨なので、病院もそちらなのですよ」
さすがに遠すぎないか、と千枝華は居心地悪く身じろいだ。ここから片道二時間はかかる。
「すまない、巻き込んで」
大和からいつもの不敵なふてぶてしさが消えていた。その顔に浮かぶ笑みはどこかはかなげで、声は弱々しい。
「手を握っていてくれないか」
男らしい節くれだった手を差し出される。無碍にもできず、結局は大和の手を握った。
「優しいな……。そういうところに私は惚れたんだ。君は覚えていないだろうが、私は前にも君に会っている。初めて見かけたとき、落ちた靴を拾って赤ちゃんを抱いたお母さんを追いかけていた。そのときは優しい子もいるな、と思った程度だった。ユウキテクノロジーズのお嬢さんだと知ったのはあとになってからだ」
呼吸の乱れこそないが、大和はまだ苦しそうだった。
「次に見かけたとき、君は将周くんと一緒にいた。やけに胸が苦しくなってね……それで私は君に恋していると気が付いたんだ。おかしいだろ、一回見かけただけの7歳も年下の女に惚れるなんて」
自嘲気味に笑って千枝華を見る。彼女は黙って首を振った。
「将周くんの創業パーティーなら君に会えると思ってもぐりこんだ。そして、やっぱり君は美しくて優しかった。最後に惚れた相手が君で良かった」
大和に優しく見つめられ、千枝華は思わず目をそらした。
窓の外では高速の壁が勢いよく流れていく。
「困るよな、こんなこと言われても。そうだ、もっと楽しい話をしよう」
彼は無理矢理に笑い、話題をそらした。
彼が一人旅をしたときのこと、ドライブで出会った野生のシカのこと、山梨から見た富士山は表か裏かなど、さまざまな話で千枝華の心をほぐしていった。
車は高速を降り、山中湖のほとりにあるホテルの駐車場に入った。
「ここにお医者様を呼んであります。社長が重病だと発覚すると会社の信用に関わるのです」
貴美子が説明した。社長の体調が会社に影響するのは千枝華にもわかるのだが、だからといって、ホテルに医者を呼ぶものだろうか。
「ここまででいい。悪かった。車で君を送らせるよ」
大和が言う。