『遠慮しないで』と甘く囁かれて ~誠実な御曹司の懐妊溺愛~
第二章
 土曜日に待ち合わせた二人は、最近話題のアクション映画を選んだ。
「意外でしたよ、佳奈先生がアクション映画が好きだったなんて」
「そうですか? 映画館でみるなら断然アクションですね」
 映画館を出ると、ハーフアップにまとめた髪が風になびく。もう既に外は暗くなっていた。
「佳奈先生、この後良かったら食事をしませんか?」
「はい」
「この先に鉄板焼きの美味しい和食の店があるけど」
「和食ですか? ええ、嬉しいです」
 都心の真ん中にある映画館の周辺には、お洒落なショップとレストランの入っている複合ビルがある。礼二は迷うことなくそのビルを目指すと、エレベーターの最上階を押した。
「このビルの最上階ですか? それはかなり」
(どうしよう、すごい値段になりそうだけど)
 都会で一人暮らしをしている佳奈のお財布事情はかなり寂しい。貯金を崩すしかないかな、と思っていると、礼二は佳奈を見下ろして微笑んだ。
「佳奈先生、約束しましたよね。遠慮しない」
「でも、次は私が奢るって」
「だからさっき、飲み物を奢って貰いました」
 確かに映画館に入った時、佳奈が二人分の飲み物を買っていた。でも、それでは随分と差がでてしまう。つい遠慮がちになるけれど、礼二は大人の余裕を見せるようにして微笑んだ。
「僕が行きたい店ですから、僕に任せてください」
「は、はい」
 さりげなく礼二の服装を見ると、シンプルな青いシャツの上に黒いジャケットを羽織り、ジーンズをはいている。パリッとした清潔感のある服装だが、生地も上質なものが使われている。きっとブランド品なのだろう。
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