最後の日〜ありがとう、マーチ〜
マーチと歩き慣れた道を歩く。風が吹くと花の香りがした。甘い香り。目が見えている時は気にしなかった香りが、私の鼻腔に入り込んでくる。
「マーチ、いい匂いだね。これは何の花の匂いかな?」
数時間後のことを誤魔化すように、私は隣を歩くマーチに話しかける。マーチからは当然何も帰ってこない。でも、隣を歩く足音が私を安心させる。まだこの子はここにいるんだって、そう思う。
歩いて、バスに乗って、マーチと初めて会った施設へと向かう。そしてその後はーーー。
考えただけで目頭が熱くなってしまう。こんな人前で泣くわけにはいかない。ダメだ。堪えろ。そう必死に言い聞かせ、スカートを強く握り締める。でも、足元にあるマーチの温もりが、私の頭の中に思い出を次々と浮かばせていくんだ。
初めて会った日、初めて道を歩いた日、遠出をした日、激しい雷雨に震えた日、肌寒い朝だった日、甘い香りが吹いた日ーーー。
唇を強く噛み締める。下を向いたら溢れて止まらなくなりそうだから、上を見上げる。綺麗な空が広がって、忙しなく人が行き来してるんだろうなって想像しながら。
「マーチ、いい匂いだね。これは何の花の匂いかな?」
数時間後のことを誤魔化すように、私は隣を歩くマーチに話しかける。マーチからは当然何も帰ってこない。でも、隣を歩く足音が私を安心させる。まだこの子はここにいるんだって、そう思う。
歩いて、バスに乗って、マーチと初めて会った施設へと向かう。そしてその後はーーー。
考えただけで目頭が熱くなってしまう。こんな人前で泣くわけにはいかない。ダメだ。堪えろ。そう必死に言い聞かせ、スカートを強く握り締める。でも、足元にあるマーチの温もりが、私の頭の中に思い出を次々と浮かばせていくんだ。
初めて会った日、初めて道を歩いた日、遠出をした日、激しい雷雨に震えた日、肌寒い朝だった日、甘い香りが吹いた日ーーー。
唇を強く噛み締める。下を向いたら溢れて止まらなくなりそうだから、上を見上げる。綺麗な空が広がって、忙しなく人が行き来してるんだろうなって想像しながら。