最後の日〜ありがとう、マーチ〜
バスに揺られること数十分、バスを降りて歩き出す。潮の香りが鼻腔に入り込んだ。ここは海が近くて、毎年夏になるとたくさんの人が海水浴にやって来る観光スポットの一つでもある。
「……懐かしいな」
歩きながらポツリと呟く。真っ暗で何も見えないけど、私の右隣には綺麗な海があるのがわかる。太陽の光が反射したコバルトブルーの海、その上を飛んでいく鴎、白い砂浜と押し寄せる波、そんな光景が頭に浮かぶ。
頭に美しい情景を浮かべながら、私はマーチと共に歩く。歩いているこの大きな橋は、初めて私とマーチが歩いた道だ。
「マーチ」
この名前を十年で何回呼んだかな。数え切れないくらい呼んだ。毎日呼んだ。
「ハッハッ」
マーチの息が聞こえてくる。いつからか、このマーチの息に安心感を覚えるようになっていた。この息は君が私のそばにいてくれている証だから。
足が止まる。マーチも歩くのをやめる。目の前にあるのは盲導犬育成施設だ。ここに入ってしまったらもう……。
「……懐かしいな」
歩きながらポツリと呟く。真っ暗で何も見えないけど、私の右隣には綺麗な海があるのがわかる。太陽の光が反射したコバルトブルーの海、その上を飛んでいく鴎、白い砂浜と押し寄せる波、そんな光景が頭に浮かぶ。
頭に美しい情景を浮かべながら、私はマーチと共に歩く。歩いているこの大きな橋は、初めて私とマーチが歩いた道だ。
「マーチ」
この名前を十年で何回呼んだかな。数え切れないくらい呼んだ。毎日呼んだ。
「ハッハッ」
マーチの息が聞こえてくる。いつからか、このマーチの息に安心感を覚えるようになっていた。この息は君が私のそばにいてくれている証だから。
足が止まる。マーチも歩くのをやめる。目の前にあるのは盲導犬育成施設だ。ここに入ってしまったらもう……。