最後の日〜ありがとう、マーチ〜
十年前、私は事故で光と色を失った。全盲になったことで婚約者には捨てられ、家族や友達からは腫れ物のように扱われた。

そんな中で、尻尾を振って私の目になってくれたマーチは、突然目が見えなくなった私にとって希望だった。マーチのおかげで生きることができた。

君と一緒に歩く時は、何も怖くなかった。

君と一緒にいる時は、見えなくなった景色を頭に浮かべることができた。

君と一緒にいることで、もう一度笑うことができるようになった。

マーチにはたくさんのものを貰った。でも私は何もマーチにできていない。それでもマーチは私のことーーー。

「ありがとう。本当にありがとう、マーチ……!」

ずっと、ずっと、大好き。そんな思いを込めて私は泣きながらマーチを抱き締めた。









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