紅色に染まる頃
「皆様、新年明けましておめでとうございます」
まずは例年通り、乾杯から始まる。
和やかに何人かの主要な人達が祝辞を述べた後、ついに会を取り仕切る一族の長老が口火を切った。
「皆さんも既にお聞き及びかと思うが、小笠原家の動向についてうかがいたい。俗世間の企業と手を組んで、一般経済を動かそうとしているというのはまことの話か?」
いちいち引っかかる言い方をする長老に、紘は立ち上がって頭を下げてから口を開く。
「ご説明致します。旧財閥の本堂グループより、小笠原家に協力を求められました。詳しく申し上げますと、株式会社本堂リゾートが新しく手掛ける宿泊施設についての監修や土地の提供などです。互いに忌憚なく意見を伝え合い、双方にとって良い話であると判断し、お引き受け致しました。現在、京都の小笠原が所有する土地に、全20部屋の宿を建設する予定でおります。古き良き日本の伝統や文化を継承する我々の役目も果たせるかと」
すると遮るように男性の声がした。
「商売目的の宿が?伝統文化の継承ですと?」
半分呆れたような物言いに、紘が真剣に答える。
「先程から妙に耳障りな言葉が聞こえて参りますが、皆様はもしや差別や偏見をお持ちですか?」
「失礼だな。何が言いたい?」
「失礼なのはどちらでしょう?我々は華族制度がとうの昔に廃止された令和の現代に生きております。人種も国境も超え、皆が互いを認め合い共存していくこの時代に、俗世間だの一般経済だの、そんな言葉で虚勢を張るのは醜いことだと思われませんか?」
ざわっと会場内が騒がしくなる。
「小笠原殿、正気ですか?あなたは我々全員を敵に回す覚悟がおありで?」
「私は信念を述べたまでです。それを皆様が敵だとお感じになるならば、私は旧華族を、小笠原の家を抜けます」
美紅はハッと息を呑む。
会場のざわめきも大きくなる一方だった。
「まさか本気で?」
「自分が何を言っているのか、お分かりですか?裕福な家を捨てて、あなたはこの先どうやって生きていくおつもりで?」
紘はきっぱりと言う。
「どうもこうも、自分の力で生きていきます。何にも縛られず、偏見や差別のない世界で」
(兄さん……)
エレナのことが頭に浮かび、美紅は思わず涙ぐんだ。
まずは例年通り、乾杯から始まる。
和やかに何人かの主要な人達が祝辞を述べた後、ついに会を取り仕切る一族の長老が口火を切った。
「皆さんも既にお聞き及びかと思うが、小笠原家の動向についてうかがいたい。俗世間の企業と手を組んで、一般経済を動かそうとしているというのはまことの話か?」
いちいち引っかかる言い方をする長老に、紘は立ち上がって頭を下げてから口を開く。
「ご説明致します。旧財閥の本堂グループより、小笠原家に協力を求められました。詳しく申し上げますと、株式会社本堂リゾートが新しく手掛ける宿泊施設についての監修や土地の提供などです。互いに忌憚なく意見を伝え合い、双方にとって良い話であると判断し、お引き受け致しました。現在、京都の小笠原が所有する土地に、全20部屋の宿を建設する予定でおります。古き良き日本の伝統や文化を継承する我々の役目も果たせるかと」
すると遮るように男性の声がした。
「商売目的の宿が?伝統文化の継承ですと?」
半分呆れたような物言いに、紘が真剣に答える。
「先程から妙に耳障りな言葉が聞こえて参りますが、皆様はもしや差別や偏見をお持ちですか?」
「失礼だな。何が言いたい?」
「失礼なのはどちらでしょう?我々は華族制度がとうの昔に廃止された令和の現代に生きております。人種も国境も超え、皆が互いを認め合い共存していくこの時代に、俗世間だの一般経済だの、そんな言葉で虚勢を張るのは醜いことだと思われませんか?」
ざわっと会場内が騒がしくなる。
「小笠原殿、正気ですか?あなたは我々全員を敵に回す覚悟がおありで?」
「私は信念を述べたまでです。それを皆様が敵だとお感じになるならば、私は旧華族を、小笠原の家を抜けます」
美紅はハッと息を呑む。
会場のざわめきも大きくなる一方だった。
「まさか本気で?」
「自分が何を言っているのか、お分かりですか?裕福な家を捨てて、あなたはこの先どうやって生きていくおつもりで?」
紘はきっぱりと言う。
「どうもこうも、自分の力で生きていきます。何にも縛られず、偏見や差別のない世界で」
(兄さん……)
エレナのことが頭に浮かび、美紅は思わず涙ぐんだ。