紅色に染まる頃
静かになった会場に、今度は女性の声が上がった。

「美紅さんはどうなの?次期当主の紘さんが抜けられたらあなたが当主になるのよ?どういうお考え?」

美紅はゆっくりと立ち上がる。

「わたくしも兄と同じ考えでございます。古い伝統や文化を守っていくことは大切ですが、それは守るべき価値があるものに対してだけです。くだらない考え方や悪しき風習は見直さなければ、何も進歩せず衰退していきます。華族制度が廃止されたのはまさにその良い例ではないでしょうか。それに……」

美紅は言葉を止めて紘に目を転じる。

「兄が小笠原家を抜けることはありません。わたくし達小笠原の人間は皆、兄と同じ考えだからです。兄が旧華族のこの集まりから抜けると申すなら、それは小笠原家が抜けるという意味でございます」

美紅……と呟く紘に、美紅は微笑んで頷く。

「わたくし達から申し上げることは以上です。それでは、失礼致します」

美紅は紘と一緒に深々と頭を下げると、そのまま会場をあとにした。
< 84 / 145 >

この作品をシェア

pagetop