ガラスのピアノは涙にきらめく ~御曹司を誘拐したら冷たく溺愛されました~
 それを持ち、漣は桜空の隣に立つ。
 背の高い彼に見下ろされ、威圧感がすごかった。気圧される桜空にかまわず彼はケースを開けて見せる。
「きれい」
 思わず声を上げた。大粒のカボションカットの薔薇水晶(ローズクォーツ)のピアスだった。小さなダイヤが一粒、その下にきらきらと揺れる。
「つけてやろう」
 言われて、桜空は今つけているピアスをはずす。
 漣の手が彼女の耳に触れる。
 それだけで顔が熱くなる。
 なのに。
 漣の指がすうっと首筋を撫でる。
 びくっと体を震わせた。
 くく、と漣が笑う。
 なんて意地悪な人なんだ。
 ぎゅっと拳を握りしめ、頬を染めて漣をにらんだ。
 くく、とまた笑い、今度は本当にピアスをつけてくれた。
 その耳に漣は囁く。
「それは盗聴器だ。音声は常に送信されて見張られている」
「そんな」
 桜空が声をあげると、漣はじろりとにらんだ。
「お、おトイレのときはどうしたら……」
 小声でたずねると、漣はあきれたように息をついた。
「裏側にスイッチがあるから切れ。だが、それだけ不利になると思え。敵と密談していると判断されても仕方のないことだ」
「わかりました」
「お前はエサだ。おとなしくしろよ」
「ま、待ってください」
「なんだ?」
「かさねさんにいつからつきあってるのか聞かれたんです」
「そんなことも決めないといけないのか」
 めんどうそうに彼は言う。
「スマホに送っておく。読んでおけ」
 はい、と桜空は答えた。
< 12 / 44 >

この作品をシェア

pagetop