ガラスのピアノは涙にきらめく ~御曹司を誘拐したら冷たく溺愛されました~
「なぜナイフがあると知っている? それに桜空は屋敷から出ていない。いつナイフを用意したんだ?」
「メイドに買わせればいいだろ!」
「申し使った者はおりません」
 メイド長が冷たく言う。
「なら、来たときにはもう持ってたんだ!」
 くくっと漣は笑った。
「ナイフについているお前の指紋はどう説明する?」
 桜空は漣を見た。指紋を調べたならば、いつの間にか部屋からナイフを持って行ったということになる。
「そんなもん証拠になるか!」
「音声もあるぞ」
 漣はスマホを出して再生した。祥介が桜空に漣を殺すように命じているものだった。
 あ、と思い出してピアスを触る。これは盗聴器になっていると言っていた。つけるのが習慣になっていたからすっかり忘れていた。
「合成だ!」
「声紋を照合するか?」
「そもそもそいつは誘拐犯だ!」
「誰が誰を誘拐したんだ?」
 祥介が言葉に詰まった。
 誘拐は公になっていない。詳細を言えば誘拐の教唆を自白するようなものだ。
「お前はなにをやってるんだ」
 哲二はため息をついた。立ち上がり、漣に頭を下げる。
「すまない。私の監督不行き届きだ」
「祥介もいい年です。自分で責任をとらせます。いいですね、父さん」
「ああ」
 家長である鋼太郎がうなずく。
「てめえ!」
 立ち上がった祥介を警護の男性がさっと取り押さえた。
「贅沢に暮らしたいならおとなしくしていればいいものを」
「覚えてろよ!」
 漣が嗤笑(ししょう)した。警護の男たちは暴れる祥介を連れて出て行く。哲二は鋼太郎にも頭を下げたのち、祥介を追った。
「おもしろくない結末だったな」
「そういう問題ではないだろう」
 あきれたように鋼太郎が言う。
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