ガラスのピアノは涙にきらめく ~御曹司を誘拐したら冷たく溺愛されました~
「う、撃つぞ!」
 近付くにつれ、祥介の震えが大きくなった。漣が彼の手をひねりあげると、ごとん、と銃が落ちる。
 とっさに桜空はそれを拾って遠くに放り投げた。
 漣は、ほう、と感心したように彼女を見た。
「離せ!」
「処分を検討中だったが、これは軽くはできないな」
「け、警察を……」
「呼ばない。学習しろ」
 動転している桜空に、漣は冷静に言う。
「くそ!」
 祥介は空いている手で後ろのポケットに手を突っ込む。
 察した桜空は祥介にとびかかる。
 祥介がナイフを出したのと桜空がとびついたのは同時だった。
 祥介と桜空はもつれあって倒れ込んだ。
「桜空!」
 祥介は頭を打ったようで頭を抱えてもがいてる。
 桜空は無事だった漣を見上げてにこっと笑った。
「桜空!」
 漣の呼ぶ声が、どこか遠くからのように聞こえ、桜空は意識を手放した。
 
 目が覚めたとき、桜空はいつもと違う天井に気が付いた。
 なにがどうなったんだっけ。
 部屋は窓から差し込む日で明るく、白い壁とカーテンが目に入った。
 ぼんやりと頭を巡らし、首を傾ける。
 そこにはうつむいて桜空の手を握る漣がいた。髪は乱れ、服はよれている。
 あの人はこんな姿を見せる人じゃない。じゃあこれは誰だろう。
 思ううちにも彼は顔を上げた。
 間違いなく漣だった。
「気が付いたか」
 心の底からの安堵を見せた。
 こんな漣など見たことがない。夢なのだろうか。心配してほしい、そんな願望が見せている夢。
 彼の手が温かかった。態度はあんなに冷たいのに。ギャップがおかしくてふふっと笑った。
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