ガラスのピアノは涙にきらめく ~御曹司を誘拐したら冷たく溺愛されました~
「息子の命を救った女性との結婚だ。反対はしない」
 どういう伝え方をしたんだろう、と桜空は漣を見る。漣は不敵に笑うばかりでなにも言わなかった。
「今日はあなたに会えたお祝いよ」
 凛子の合図でメイドがカーテンと窓を開けると、そこにはオーケストラがいた。全員がガラスの楽器を持っている。
「すごい……」
 青空の下、楽器がきらきらと輝いている。
「おいで」
 漣に手を差し伸べられて、桜空はその手をとる。
 テラスに出てソファに誘導された。
 鋼太郎と凛子も続き、別のソファに座った。
 指揮者が棒を振り上げる。
 音楽がなめらかに滑り出した。
 曲名はわからないが、穏やかな曲調が平和な午後にとても合っていた。音は躍動したかと思うと頼りなくなり、次の瞬間にはごおっと振動するほどに響く。
 クラシックって迫力のある音楽なんだ、と桜空は驚いた。もっと静かで退屈なものだと思い込んでいた。
 うっとりと聞いていると、ふと漣が囁いた。
「まだそれをつけているのか」
 盗聴器つきのローズクォーツのピアスだった。
「はずしていいって言われてないから」
「バカなのか」
「そう言うの、よくないと思います」
「……そうだな、君はバカであってバカではない。勉強はできないようだが、機会に恵まれなかっただけだろう。察しはいいし機転もきく」
 初めてまともに褒められた気がして、桜空はどきどきした。
「これをつけろ」
 懐からケースを出して、桜空に差し出す。
 受け取って蓋をあけた桜空は、目を見開いた。
「かわいい!」
 桜空には種類がわからなかったが、コンクパールだった。希少で、高価だ。プラチナの土台に控えめなダイヤがあり、雫のような形のピンクのパールがぶら下がる。桜色を濃くしたようなピンクだった。色も良い形の揃った一対でこの仕上がりなら300万はくだらない。
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