ガラスのピアノは涙にきらめく ~御曹司を誘拐したら冷たく溺愛されました~
 睨まれて、桜空はおずおずとお手拭きで手を拭いてサンドイッチに手を伸ばす。
 一口食べて、驚いた。
「おいしい!」
「よろしゅうございました」
 にこにこと店員の男性に言われて、桜空はなんだか恥ずかしくなった。
 漣は紅茶を口にしただけで軽食には手を付けない。
 こんなに美味しいのに。
 クッキーもプチケーキもいただいた。どれもおいしくて桜空は幸せな気持ちになった。
 食べ終わって手を拭いていると、服を持った店員が入って来た。
「お衣裳をお持ちいたしました」
「さっさと着ろ」
 桜空は目を丸くした。
 女性店員に手を引かれて試着室に入る。
 淡いピンクの清楚なワンピースだった。こんなもの着たことがない。靴は白いパンプスが用意されていた。
 恐る恐る着替えて出てくると、漣はじろっと彼女を見た。
「めんどくさい、それでいい。あとは持ち帰る。メイクもどうにかしてくれ」
 かしこまりました、と店員が言う。
 すぐさま別の店員が数人入って来た。
 ドレッサーにつれていかれ、髪を整えられ、丁寧にメイクをされる。
 桜空はされるがままになっていた。正直なところ、どうしたらいいのかわからなかった。
「指輪をお持ちいたしました」
 店員がトレイを漣に見せる。
 漣がメイクを終えた桜空を指で呼ぶ。
「好きなだけ選べ」
「は!?」
「ホーリーウィンストン、ディー・ハニー、ガルディエ、ジャメル、シャンパール、シキモトでございます」
 店員が上から順に説明した。各ブランドの指輪が5個ずつ並んでいた。ダイヤもカラーストーンもあった。
「なんで」
「恋人へのプレゼントに理由はいらん」
 めんどくさそうに漣が言う。
「だって、そんな」
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