財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
「お前の子じゃないんだろう。誘拐で警察を呼ばれたくなければ親の連絡先を教えろ」
「めんどくさ」
 仕方なさそうにスマホを出し、電話番号を海里に伝える。
 茉優が出て行くと、海里はすぐさま連絡を入れた。
「赤ん坊を届けに行く。一緒に来てくれる?」
 海里に言われ、千遥はうなずいた。

 赤ん坊の親は茉優の妹夫婦だった。
 二人は白いノールスロイスにも千遥たちにも目もくれず、その腕に抱かれた赤ん坊の無事を見て涙を流し、受け取った。赤ん坊は思い出したように泣き、母親にすがる。
「姉に無理矢理連れていかれて、心配していたんです。ありがとうございました。姉のことで真道さんにはご迷惑ばかりおかけして」
 妹夫婦は何度も何度も彼に頭を下げた。

 ホッとしてノールスロイスに戻ると、海里が手を握って来た。
「来てくれてありがとう。うれしいよ。こたつのこと、ごめんね」
 千遥はどきどきしながらうつむいた。手をふりほどくことはできなかった。
「書類があるって言われたから。なんの書類?」
「知らない。なんのこと?」
 千遥は、ああ、と天を仰いだ。
 海恋がぺろっと舌を出して笑う姿が目に浮かぶようだった。
「騙されてばっかり」
 海里は顔に疑問を浮かべて千遥を見た。
 彼女は苦笑して首を横に振り、手を握り返す。
 彼の手はこたつよりも温かかった。

 手を繋いで店に戻ると、チンピラのような借金とりがまた来ていた。
 千遥の温かくなった心がいっきに冷えた。
「逃げたかと思ったぞ」
 にやにやとスーツの男が言う。
「兄ちゃん、俺は彼女と話しがあるんだ。席をはずしてもらえるか」
「とりあえずコーヒーでもどうですか。おごりますよ。夕飯は食べました?」
 店の時計をちらっと見て海里は言った。
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