絶縁されたので婚約解消するはずが、溺甘御曹司さまが逃してくれません

 確かに、燈子が無断で行った遺伝子鑑定だけで親子関係を否定するのはあまりにも早計だ。一緒に住んでいればDNA情報を採取すること自体はそう難しくはないだろうが、正確な手順を踏んだ鑑定ではない以上、信憑性に欠けるし法的根拠も薄いだろう。

 そう考えて頷く絢子だったが、玲良の考えはまたも絢子の考えと異なっていた。

「だが調べるのは、桜城社長との親子関係じゃない」
「……え?」
「ここ数日色々調べてみて、個人的に気になる人物を見つけた。ただ……今は相手の情報は伝えられない。だからもし絢子とその人物との間に血縁関係が証明できなかった場合は、絢子にも相手にも双方の情報を伝えず、俺の勘違いということで処理させてもらうつもりだ」
「……」

 思いもよらない玲良の提案に言葉を失ってしまう。

 だが思慮深く慎重な玲良のことだ。おそらくある程度の確証を持っているからこそ、このような一見突拍子もない提案をしてくるのだろう。

 当然、絢子と匠一の間に本当に血縁関係がないことも見抜いている。観察眼の鋭い玲良がその大前提をもとに『匠一ではない人物との血縁関係を調べたい』と言い出すことは、まだ一縷の望みを捨てていなかった絢子にとっては少しだけ寂しい知らせだった。

「もちろん断ってもいい。相手からは既に了承を得ているが、知る選択も知らないままでいる選択も、絢子の自由だ」
「……いいえ」

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