絶縁されたので婚約解消するはずが、溺甘御曹司さまが逃してくれません
しかしどんなに嘆いても事実は変わらない。真実を心の底から受け入れるにはまだ少し時間がかかるかもしれないが、いずれは向き合わなければならないこと。優しい玲良は自分のルーツや隠されてきた秘密と向き合う辛さに寄り添ってくれるし、慎重に考えていいと言ってくれるけれど、いつまでも下を向いてはいられない。
「受けます。正式なDNA鑑定、受けさせてください」
「……そうか、わかった」
絢子がはっきりとした口調で告げると、玲良が少し安堵したように息を零す。絢子の身分をはっきりさせなければ正式に婚約を解消できないのは、玲良も同じなのだ。
「ちなみに鑑定を受けても受けなくても、結果がどうであっても、俺は今後も絢子を口説き続けるからな」
「えっ……?」
「当然だろ」
微かな不安を包み込むように、玲良がふっと笑って肩を抱いてくれる。絢子の困惑を優しく受け止めてほどいてくれるような視線と温度に、また少し心臓が高鳴る。
「俺の相手は、生涯絢子だけだ」
「あきら……さ、ん」
ぐいっと肩を引き寄せられて、大きな胸の中に抱きしめられる。どちらかというと細身の印象がある玲良だが、こうして触れ合うと彼がちゃんと男性らしい身体つきをしていることに気づく。
一瞬、空気が止まる。
けれど顔を覗き込まれると、すぐに世界が動き出した。あたたかくて甘い温度と空気に飲まれるように、玲良の胸にそっと縋る。