聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
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囮にして欲しい。
リリシアの願いは聖騎士団に聞き入れられた。
そして、空を覆う黒い雲から丸く巨大な月が現れた夜、ラギドは斃れた。
肩をむき出しにした白い聖衣を纏って森の入り口に立つ彼女を見つけた魔獣は、目を爛々と輝かせ、舌舐めずりをして勝利の雄叫びを上げた。リリシアの魔印が恐ろしいほど光り、彼に獲物の位置を知らせたのだ。
だがその雄叫びは一瞬にして絶叫へと変わる。
一歩ずつ、悠々とリリシアの元へ近づく魔物の前に聖騎士長が立ちはだかり剣を一閃、ラギドの腹を裂いたのだ。
「お前の腹を引き裂く日を心待ちにしていたのだよ、憎きラギド」
聖騎士長セヴィリス・デインハルトは全身の力を込め、もう一度、今度は魔物の喉元に剣を突き刺し、そのまま横へ刀身を横へ振り払う。どす赤い血を噴きながら彼の弟の命を奪った魔獣、ラギドはどさりと地面へ倒れた。
聖騎士の瞳は赤々と燃えたぎり、全身から蒼い炎を立ち上らせていた。リリシアはこの時あらためて、穏やかで優しい夫が剣を持つと全く別人のようになることを知った。
リリシアを護るべく側へついていた副聖騎士長のダリウスは自慢げに頷く。
「あれが我が甥っ子殿だ。貴女を妻としてから、ますます修練に余念がない。これからも、聖騎士団の誇りとなるだろうね」