二人の歩幅が揃うまで
「…綾乃ちゃん、大好き。」
ふにゃっと目を細めて、夢見るような表情で見つめられてはさすがの綾乃もじわじわと恥ずかしくなってきた。
「…ご飯、食べよ。私、このままだらだらしてたら会社遅刻しちゃう。」
「作るよ。何食べたい?」
「ちょっと食欲、今のところないからさらっと食べれそうなものがいいな。」
「冷やし茶漬けにしよっか。」
「うわ!嬉しい!それなら食べれそう!」
食欲がないと言った舌の根も乾かぬうちに、冷やし茶漬けのことを思い浮かべては空腹を感じ始めてきた。我ながら単純な思考回路も、目の前の健人が嬉しそうだから嫌にはならない。
「お弁当も作れそうだから作っちゃうね。」
「いいの?」
「うん。綾乃ちゃんにしっかり食べてほしいし。」
「嬉しい!ありがとう!お昼まで頑張れそう~!」
健人の作る食事は味も好きだが、優しさが感じられて好きだった。それは出会った頃も今も変わっていない。むしろ今の方が的確に味の好みを把握されていて、綾乃の好みにぴったりとはまったものを出されることが多くなった。そういう、綾乃を見てくれているからわかるであろうことを健人が一つ一つ零さずにすくい上げてくれることが嬉しい。だからこそ昨日は甘やかしたくなったのだ。…と、痛む腰をさすりつつ、自分をなだめる。
顔を洗い、着替えて、洗濯物を放り込み、化粧をいつもより入念に施した後にリビングに戻ると、美味しい香りが鼻を通り抜けていった。温かい緑茶まで用意されていて、今日の朝食は完全に『和』だった。
「綾乃ちゃん、やっぱりかっこいいね。」
「そうかな?今日はスーツじゃないし、あんまりかっこよさの演出できてない気がするけど。」
「お化粧かな?いつもよりはっきりめ!」
「…それは気合と寝不足を隠すためね。」
「な、なるほど!そういうところも大変なんだね。…重ね重ね、ごめんなさい。」
「健人を甘やかしたいって思ったの、私だし。1日くらいは何とかなるから大丈夫。健人のお弁当もあるし、朝ご飯もこんなにちゃんとあるし。」
パスタにでも混ぜようと思って買ってあったしらすと、常駐させてある梅干をうまい具合に使って、しらすと梅干の冷やし茶漬けが完成していた。着席し、二人で向かい合い、手を合わせる。
「「いただきます。」」
口いっぱいに広がるだし汁の旨みと、梅干しの酸味が美味しくて綾乃は満面の笑みを浮かべる。
「美味しい!」
「口に合ってよかった。」
特別な最初の夜をこえ、不安は静かに愛しさへと形を変えた。優しさは変わらず、ずっとある。
「途中までは一緒に行こうね。」
「うん。」
いつもよりも甘くて、少し恥ずかしくて、だけどおそらく一生忘れられない朝だった。
ふにゃっと目を細めて、夢見るような表情で見つめられてはさすがの綾乃もじわじわと恥ずかしくなってきた。
「…ご飯、食べよ。私、このままだらだらしてたら会社遅刻しちゃう。」
「作るよ。何食べたい?」
「ちょっと食欲、今のところないからさらっと食べれそうなものがいいな。」
「冷やし茶漬けにしよっか。」
「うわ!嬉しい!それなら食べれそう!」
食欲がないと言った舌の根も乾かぬうちに、冷やし茶漬けのことを思い浮かべては空腹を感じ始めてきた。我ながら単純な思考回路も、目の前の健人が嬉しそうだから嫌にはならない。
「お弁当も作れそうだから作っちゃうね。」
「いいの?」
「うん。綾乃ちゃんにしっかり食べてほしいし。」
「嬉しい!ありがとう!お昼まで頑張れそう~!」
健人の作る食事は味も好きだが、優しさが感じられて好きだった。それは出会った頃も今も変わっていない。むしろ今の方が的確に味の好みを把握されていて、綾乃の好みにぴったりとはまったものを出されることが多くなった。そういう、綾乃を見てくれているからわかるであろうことを健人が一つ一つ零さずにすくい上げてくれることが嬉しい。だからこそ昨日は甘やかしたくなったのだ。…と、痛む腰をさすりつつ、自分をなだめる。
顔を洗い、着替えて、洗濯物を放り込み、化粧をいつもより入念に施した後にリビングに戻ると、美味しい香りが鼻を通り抜けていった。温かい緑茶まで用意されていて、今日の朝食は完全に『和』だった。
「綾乃ちゃん、やっぱりかっこいいね。」
「そうかな?今日はスーツじゃないし、あんまりかっこよさの演出できてない気がするけど。」
「お化粧かな?いつもよりはっきりめ!」
「…それは気合と寝不足を隠すためね。」
「な、なるほど!そういうところも大変なんだね。…重ね重ね、ごめんなさい。」
「健人を甘やかしたいって思ったの、私だし。1日くらいは何とかなるから大丈夫。健人のお弁当もあるし、朝ご飯もこんなにちゃんとあるし。」
パスタにでも混ぜようと思って買ってあったしらすと、常駐させてある梅干をうまい具合に使って、しらすと梅干の冷やし茶漬けが完成していた。着席し、二人で向かい合い、手を合わせる。
「「いただきます。」」
口いっぱいに広がるだし汁の旨みと、梅干しの酸味が美味しくて綾乃は満面の笑みを浮かべる。
「美味しい!」
「口に合ってよかった。」
特別な最初の夜をこえ、不安は静かに愛しさへと形を変えた。優しさは変わらず、ずっとある。
「途中までは一緒に行こうね。」
「うん。」
いつもよりも甘くて、少し恥ずかしくて、だけどおそらく一生忘れられない朝だった。


