一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
 私の母の事件もラナーシャの母の事件も、かなり昔の出来事である。それに加えて、大胆に動くことはできない。そういった事情故、情報は中々集まらなかった。
 もちろんそれは重要なことではあるが、そればかり気にしていては仕方ない。そう判断した私は、屋敷での生活を楽しみ、それをラナーシャにも示した。

 そんなこんなで生活を送っている内に、時は流れていった。
 そこで私は、一つの問題に直面することになる。それは、マグナス様と決めていた結婚の期限のことだ。

 一年後に離婚する。結婚してすぐに、彼はそう言ってきた。
 その約束に、私は同意した。それは間違いない。

 だがともに生活していく内に、その意思は薄れていた。
 ここでの生活は、心地いい。いつからか、私はそう思うようになっていたのだ。

 マグナス様は、素晴らしい尊敬できる人であると思っている。
 最初の要求には驚いたが、今となっては良き夫であるとさえ思う。
 そんな彼と離婚したいとは思わない。事件のこともあるし、本当にそれでいいのだろうか。

「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」

 そんなことを思っていた私に、マグナス様はそのようなことを言ってきた。
 当然私に、それを断る理由なんてない。故に私は、彼の要求に力強く頷いた。
 こうして私達は、その奇妙な結婚生活を続けるということになったのである。
< 52 / 88 >

この作品をシェア

pagetop