知人の紹介で
 そうして陽菜は本当に優作の両親の店で働くことが決まり、二、三ヶ月もすればすっかり店の看板娘となっていた。

 優作は就職を機に実家を出ており、今ではほとんど実家には顔を出さなくなっていたのだが、陽菜が働きだしてからは彼女のことが心配で週に一回は様子を見に行っている。

「いらっしゃいませー。あ! 優作さんだ。こちらにどうぞ」
「ありがとう、陽菜ちゃん」

 様子を見るだけなら裏から入ってもいいのだが、陽菜の接客ぶりをしっかり見ていたくて、優作はいつも客として訪れている。

「優作、あんたまた来たの? 私がたまには帰ってきなさいって言っても全然帰ってこなかったのに。まったく陽菜ちゃん様様だねぇ」

 母にそんなふうにからかわれても優作は堂々としていた。出会いが出会いなだけに陽菜のことが本当に心配なのだ。陽菜の親も陽菜がここで働いていることは知っているし、自分がしっかりと見守らなければ、なんて思っている。

「俺が紹介したんだから、心配して見にきてもおかしくないだろ?」
「あらあら、そうですか」
「優作さん。今日は何にしますか?」
「うーん。今日はアジフライ定食にしようかな」
「はーい。ご飯大盛ですよね?」
「うん、よろしく」

 初めは優作に引け目があるのか、陽菜は優作に対して妙にかしこまって接することが多かったのだが、今では優作にも大きな笑顔を向け、気兼ねなく接してくれるようになった。店が混んでいなければ、たわいもない話をしたりして、二人は随分と親しくなっていた。
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