知人の紹介で
「……純花さん、この間、男の人と二人で駅前歩いてなかった?」
「え?」

 純花のことを訊いてくるとは思わなくて驚いた。しかも、男と二人で歩いていたと言われてもまったく心当たりがない。

「先週の土曜日、男の人と歩いてたよね?」

 そこまで言われて純花はようやく思いだした。ゼミ仲間と皆でファミレスに行っていたと。その日は課題について話そうと五人で集まっていたのだ。ただ、純花とあともう一人は用事があったから、二人だけ先に抜けたのだ。おそらくそのときのことを言っているのだろう。

 だが、なぜ湊斗がそのことを訊いてくるのかはわからなかった。

「ああ! そうだね。ファミレスから駅に向かって歩いてたかな。それがどうかした?」
「……その人、純花さんの彼氏?」

 これまた予想外過ぎる問いがきて、純花はまたもや驚いた。この手の話題はただの一度もしていない。まさか湊斗がそんなことを訊いてくるとは思わなかった。

 一緒に歩いていたのはゼミ仲間だし、特に訊かれて困るわけではないのだが、純花の頭の中はもう疑問符だらけである。

「ええ? 違うよ。ゼミ仲間だよ」
「本当に? 純花さん、その人のこと好きだったりしない?」
「いや、本当にただのゼミ仲間だよ?」
「じゃあ、他に彼氏いるの?」

 湊斗はずっと不安な表情を浮かべてそんなことを訊いてくる。まったく突然どうしたというのだろう。

「突然どうしたの? 彼氏はいないよ」
「本当?」
「本当だよ」
「そっか……よかった。なんだか純花さん取られたみたいでちょっと淋しかったから」

 そこまで聞けば純花にもわかった。湊斗は心を許せる相手が限られているから、純花が自分よりも親しくしている人がいると思って不安になってしまったのだろう。自分よりも他の人を優先されると思って淋しくなったに違いない。
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